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2026/08/20

社内の書式をGemini Notebookに覚えさせる手順

筆者/喜多 辰徳

AIで報告書の下書きを作らせたことがある方なら、この感覚に覚えがあるかもしれません。内容は悪くない。でも見出しの立て方が社内の様式と違う。決まり文句の位置も違う。直しているうちに、自分で書いたほうが速かったのではと思えてくる。

多くの人がここでAIを閉じます。そして「うちの書式は特殊だから」と結論づけます。しかし実際に起きているのは、AIに様式を渡していないというだけのことです。この記事では、自社の書式をAIに保持させる具体的な手順と、その際に必ずぶつかる制約への対処をお伝えします。

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「うちの書式に直すのが手間」の正体

書類仕事の中身を分解すると、時間を食っているのは文章を考える工程ではありません。白紙を前に構成を悩み、決まり文句を思い出し、体裁を整える工程です。

AIに下書きを作らせると、このうち「文章を考える」だけが速くなります。体裁を整える工程は、そのまま残ります。だから全体としては、あまり速くなったように感じません。

つまり、体裁を整える工程まで渡さないと、効果を実感できないということです。自社の書式は、AI活用の障害ではありません。まだ渡していない材料です。


書式は「2階建て」で渡します

渡し方には順番があります。多くの解説記事は「カスタム指示に希望を書きましょう」で終わりますが、社内の様式を扱う場合はそれでは足りません。

・1階:カスタム指示には、文書の種類を問わず常に守ってほしいことだけを置く

・2階:様式の本体は、お手本の文書そのものを渡す

この2つを分けるのが要点です。理由は、カスタム指示に書ける量に限りがあることと、そこに書いた内容がすべての用途に効いてしまうことにあります。

そして、この2階建てを一番きれいに実装できるのがGemini Notebookです。

Gemini Notebookは、お手本を置きっぱなしにできます

Gemini Notebook(旧NotebookLM)の構造上の利点は、資料をソースとして常設できるところにあります。

過去に評判の良かった月次報告を1本、ソースとして追加しておきます。すると、そのノートブックの中では、以降ずっとその文書を参照した状態で会話ができます。依頼のたびにファイルを添付し直す必要がありません。

これが2階建ての2階にあたります。1階のカスタム指示は、チャットパネルの設定から入力します。

このノートブックでは、社内向けの文書を作成します。

・出力は必ず、ソースに入れた「月次報告テンプレート」の構成と文体に従ってください
・です・ます調で書いてください
・結論を先に書き、理由をあとに置いてください
・数字や固有名詞を推測で補わず、不明な箇所は「要確認」と明示してください

最後の1行が効きます。AIは空欄を埋めたがるので、推測で数字を入れてしまうことがあります。先に禁じておくと、確認すべき箇所が明示されて戻ってきます。

ノートブックを分けると、書式が混ざりません

部署ごとに様式が違う職場では、ノートブックを分けてください。総務用のノートブック、営業用のノートブックというように分けておけば、それぞれのソースと設定がその中だけで効きます。

「部署ごとに書式が違うので混ざったら困る」という不安は、この分け方で解消します。

チャットのカスタマイズは有料機能です

ここは正確にお伝えします。チャットパネルの設定から会話のスタイルを変更する機能は、Proの機能として提供されています。標準のほか、分析寄り、案内寄りといったスタイルを選べるほか、独自の指示を書くこともできます。応答の長さも指定できます。

一方で、ソースの追加そのものは無料の範囲でできます。つまり2階部分だけなら、いますぐ試せます。

まずお手本をソースに入れて、依頼のたびに「ソースの月次報告テンプレートの構成と文体を厳密に守って」と一行添える。これだけでも、体裁を整える工程はかなり減ります。


ChatGPTの場合は、文字数の上限に注意します

ChatGPTでも同じことができますが、制約の形が違います。

設定からパーソナライズを開き、カスタム指示の欄に入力します。Web版、デスクトップ版、iOS、Androidのすべてで使え、無料プランでも利用できます。設定した内容は既存の会話にも即座に反映されるため、新しいチャットを立ち上げ直す必要はありません。

注意すべきは保存できる文字数です。無料プランとGoプランは1,500文字まで、Plus・Pro・Enterprise・Business・Educationプランは5,000文字までとなっています。

社内の様式を丸ごと貼り付けようとすると、この枠に収まりません。仮に収まったとしても、すべての会話に毎回その内容が効いてしまい、関係のない用途にまで影響します。

ですからChatGPTでも、カスタム指示には常に守ってほしいことだけを置きます。

【あなたについての詳細】
地方の製造業で総務を担当しています。社内文書と取引先向けの文書を
作成することが多いです。

【カスタム指示】
・です・ます調で書いてください
・専門用語には短い補足を添えてください
・結論を先に書き、理由をあとに置いてください
・数字や固有名詞を推測で補わず、不明な箇所は「要確認」と明示してください
・箇条書きは「・」を使ってください

そして様式の本体は、依頼のたびにファイルを添付して渡します。

添付した「月次報告テンプレート」の構成と文体を厳密に守って、
以下の内容で今月分を作成してください。

Gemini Notebookとの違いは、この添付が毎回必要になる点です。文書の種類が少ないうちは気になりませんが、種類が増えてくるとGemini Notebookのほうが楽になります。


Claudeの場合は、プロジェクトで分けます

Claudeにはプロジェクトという機能があります。プロジェクトごとにカスタム指示を設定でき、その指示はそのプロジェクト内の会話だけに適用されます。

考え方はGemini Notebookのノートブックとほぼ同じです。総務用のプロジェクト、営業用のプロジェクトと分けておけば、指示が混ざりません。文体や出力形式をまとめて指定したい場合は、スタイル機能も使えます。

いま手元にあるのがどれであっても、やることは変わりません。1階に共通ルール、2階にお手本です。


覚えさせたあとは、指示が驚くほど短くなります

2階建てで渡しておくと、日々の依頼文が短くなります。

報告書であれば、材料を投げるだけです。

ソースの資料をもとに、報告書の下書きを作成してください。

1. まとめ(結論を3行で)
2. 背景と現状
3. 分かったこと(根拠を添えて)
4. 課題とその原因
5. やるべきこと(優先順位をつけて)

それぞれ、どの資料のどこに書いてあるかを示してください。

最後の一行を入れておくと、あとで「この数字はどこから来たのか」と聞かれたときに、すぐ原典に戻れます。上司への説明に強い下書きになります。

申請書や稟議書も同じ考え方です。過去の承認済み文書と記入例をソースに入れておき、あとは今回の内容をメモ書きで投げます。各欄に何を書くべきかまで整った状態で返ってきますので、あなたの仕事は転記と最終確認だけになります。


メール返信は「何を書くか」だけ人がやる

書類仕事の中で、意外に時間を吸われているのがメールです。1通あたりは短くても、返信の言い回しを選んでいる時間が積み上がります。

ここで分解すると、時間がかかっているのは「何を伝えるか」ではなく「どう書くか」です。伝えたいことは、実は数秒で決まっています。

以下のメールへの返信を作成してください。
伝えたい内容は【返信内容】のとおりです。

・受信メール
(受信したメールの本文を貼り付け)

・返信内容
(例:日程は問題なし。ただし予算は要相談。来週木曜に打ち合わせを希望)

【返信内容】は箇条書きのメモで構いません。「日程OK、予算は相談、木曜希望」という10秒のメモが、角の立たない文面に変換されます。

「この言い回しは失礼だろうか」と画面の前で固まる時間が消えるのは、作業時間の削減以上に効きます。


長い資料は、回す前に2分投資する

30ページの資料に「一読しておいてください」と添えて回覧すると、受け取った全員がそれぞれ読む時間を使います。しかし多くの人にとって、判断に必要な箇所は数ページだけです。

回す前に、要約を添えてください。

この資料を、忙しい人向けに要約してください。

1. 3行サマリー
2. 特に重要なポイントを3つ(該当ページを添えて)
3. 読み手が判断・対応すべきこと

該当ページを添えさせるのがポイントです。要約で全体をつかみ、自分に関係する箇所だけ原文に戻れます。

要約を付けて資料を回す人は、それだけで仕事ができる人として認識されます。


この順番で始めてください

一度に全部やる必要はありません。次の順番が確実です。

・過去に評判の良かった文書を1本選び、お手本として用意する

・Gemini Notebookでノートブックを1つ作り、そのお手本をソースに入れる

・次に作る文書で「ソースの構成と文体を厳密に守って」と添えて依頼する

ここまでで、体裁を整える工程が消えます。1本うまくいったら、文書の種類ごとにノートブックを増やしていってください。

なお、会社の資料をAIに入れる前に、社内ルールの確認は済ませておいてください。取引先名や金額が含まれる文書であればなおさらです。判断がつかない場合は、固有名詞を伏せる、金額をダミーに置き換えるといった処理をしてから渡す方法もあります。


よくある質問

Q. Gemini NotebookとNotebookLMは別のサービスですか。

A. 同じものです。2026年7月16日に名称が変更されました。既存のノートブックはそのまま使えますし、移行作業も不要です。情報を探すときは、まだ「NotebookLM」で検索したほうが多く見つかります。

Q. 無料のままでもできますか。

A. お手本をソースとして入れる部分は、無料の範囲でできます。チャットの会話スタイルを設定から変更する機能は、Proの機能として提供されています。まずは無料の範囲でソースを入れて試し、必要になってから検討する順番で問題ありません。

Q. カスタム指示に社内の様式を全部貼り付けてもいいですか。

A. 様式の本体はお手本の文書そのものを渡してください。ChatGPTのカスタム指示には文字数の上限があり、収まらないことが多いですし、収まってもすべての会話に影響します。

Q. 部署ごとに書式が違います。混ざりませんか。

A. Gemini Notebookならノートブックを、Claudeならプロジェクトを部署ごとに分けてください。それぞれのソースと設定が、その中だけで効きます。

Q. AIが作った文書は、そのまま提出してよいですか。

A. 固有名詞と数字だけは必ず自分の目で確認してください。カスタム指示に「不明な箇所は要確認と明示する」と入れておくと、確認すべき場所が分かりやすくなります。


まとめ

書類仕事を手放すために、押さえるべきことは3つです。

・自社の書式は、AI活用の障害ではなく、まだ渡していない材料です

・渡し方は2階建てにします。カスタム指示には常に守ることだけを置き、様式の本体はお手本の文書として渡します

・Gemini Notebookならお手本をソースとして置きっぱなしにできます。この部分は無料の範囲で試せます

まずは、評判の良かった文書を1本、お手本として用意するところから始めてください。ここが用意できていれば、あとの手順はすべて短くなります。

▼3分で理解できる!マンガ風スライドはこちら


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