「この判断、本当に正しいのだろうか」
新しい事業に踏み出すべきか、それとも今の事業を守るべきか。採用にコストをかけるべきか、設備投資を優先すべきか。中小企業の経営者であれば、こうした岐路に日々立たされているはずです。
大企業には経営企画部があり、コンサルタントがいて、取締役会がある。でも多くの中小企業では、社長ひとりで考え、ひとりで決めなければならない。石川県の中小企業も例外ではありません。
「あの経営者だったら、この局面でどう判断するだろう?」
そんな問いに、AIが答えてくれる時代が来ています。今回は、Xで大きな反響を呼んだ「AI社長」という手法を紹介しながら、NotebookLMとGemを組み合わせて「自分だけの経営メンターAI」を作る方法をお伝えします。
「AI社長」とは? ― SNSで話題になった経営者AI召喚術
「AI社長」は、AI活用の情報発信で知られるえーたんさん(@ai_jitan)がXで公開した手法です。投稿は76万回以上表示され、大きな話題になりました。
仕組みはシンプルです。GoogleのAIノートツール「NotebookLM」に、ある経営者に関する情報を徹底的にストックする。そして、GeminiのカスタムAI機能「Gem」にそのNotebookLMを連結する。すると、その経営者の思考パターンや判断基準を踏まえたAIが完成します。
孫正義、スティーブ・ジョブズ、稲盛和夫――好きな経営者を選んで情報を集め、AIに「召喚」できる。しかも、そこに自社の情報もあわせてストックすることで、自分のビジネスの文脈を理解した上でアドバイスをくれるAIメンターになるのです。
なぜNotebookLM × Gemの組み合わせが優れているのか
ここで「ChatGPTに直接、経営者の名前を入れて相談すればいいのでは?」と思う方もいるでしょう。たしかにそれでも一定の回答は得られます。しかし、NotebookLM × Gemの組み合わせには明確な利点があります。
まず、NotebookLMは「ユーザーがアップロードした資料だけを情報源にする」という設計思想を持っています。汎用AIのように学習データ全体から回答を生成するのではなく、あなたが指定したソースのみに基づいて回答する。つまり、AIが事実でないことをもっともらしく語る「ハルシネーション」が起きにくい構造になっています。
次に、Gemはいわば「カスタム指示を保存できるAI」です。ChatGPTの「GPTs」と同じ発想で、毎回プロンプトを入力しなくても、設定した役割や口調で一貫した回答が返ってきます。
この2つを連携させることで、「正確な情報に基づいた回答」と「繰り返し使えるカスタムAI」の両方を手に入れられるわけです。
さらに、2026年1月のアップデートでGoogle Workspaceアカウントでもこの連携が利用可能になりました。法人環境ではGeminiとのやり取りが組織外に開示されず、データがモデルのトレーニングに使用されることもありません。「自社の情報をAIに入れて大丈夫なのか」という懸念に対しても、安心して使える環境が整っています。
AI社長の作り方 ― 3ステップで経営メンターを召喚
えーたんさんが公開している手順を要約すると、大きく3つのステップで構成されています。

ステップ1:NotebookLMで経営者の情報を収集する
NotebookLMの「ソースを探す」機能を使い、3つの視点から情報を集めます(斜体箇所をそのままコピペで使えます)。
内面・OS:経営哲学、リーダーシップ論、意思決定の基準
「[社長名]の経営哲学・リーダーシップ論・意思決定の基準・組織づくりの本質を深掘りした記事やインタビュー」行動・アプリ:ビジネス戦略、成功と失敗のエピソード、キャリアの転機
「[社長名]のビジネス戦略・イノベーション事例・成功と失敗の具体的エピソード・キャリアの転機に関する記事」出力・UI:名言集、話し方の特徴、対人コミュニケーションのスタイル
「[社長名]の名言集・話し方や言葉選びの特徴・社員やメディアへの接し方がわかる対談記事や講演ログ」
この3つの切り口で情報を集めることで、「何を考える人か」「どう動く人か」「どう伝える人か」が立体的に再現されます。
ステップ2:自社の情報もストックする
ここがAI社長を「汎用的な偉人チャットボット」で終わらせないためのポイントです。自社の事業内容、課題、財務状況、組織体制などの情報もNotebookLMに追加します。すると、経営者の思考パターンがあなたの会社の文脈に合わせて適用されるようになります。
ステップ3:GemにNotebookLMを連結する
Geminiの画面から「Gemを作成」し、知識のセクションで先ほど作成したNotebookLMのノートブックを選択します。カスタム指示には「この経営者として振る舞い、ユーザーの経営課題に対してアドバイスしてください」といった内容を設定します。
詳しい手順やプロンプトの全文は、えーたんさんの元投稿で公開されていますので、ぜひ参照してください。
→ えーたんさんのX投稿:https://x.com/ai_jitan/status/2012268788641599752
▼召喚可能な社長40名分のプロンプト一覧(えーたんさん作成)

石川県の中小企業ではこう使える ― 4つの活用シーン
AI社長が特に力を発揮するのは、次のような場面です。
新規事業の方向性を壁打ちする。たとえば「北陸新幹線の延伸で観光客が増えているが、自社の製造技術をどう活かせるか」といった問いを、ジェフ・ベゾスの顧客起点思考で考えてみる。自分だけでは出てこない発想が引き出される可能性があります。
採用や組織の課題を相談する。人材不足に悩む地方企業にとって「限られた人数でどう組織を回すか」は切実な問題です。稲盛和夫のアメーバ経営の考え方で自社を見つめ直す、といった使い方ができます。
事業承継の判断を整理する。石川県でも事業承継は大きなテーマです。「次の世代に何を残し、何を変えるべきか」を、複数の経営者の視点から多角的に検討できます。
日々の経営判断を素早く行う。大きな決断だけでなく、「この見積もりを出すべきか」「この提携先と組むべきか」といった日常の判断にも、信頼できる壁打ち相手として機能します。
使う前に知っておきたい3つのこと
ここまで読んで「すぐ試したい」と感じた方もいるかもしれません。ただ、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
1つ目。AI社長はあくまで「その経営者に関する公開情報をもとにした再構成」であり、本人の思考そのものではありません。稲盛和夫のAI社長が出す回答は、稲盛氏が実際に答えるであろう内容とイコールではない。この前提を忘れずに、参考意見のひとつとして活用するのが適切です。
2つ目。ソースの質が回答の質を決めます。NotebookLMに入れる情報が薄ければ、当然AIの回答も浅くなります。経営者に関する書籍の要約、インタビュー記事、講演録など、質の高い情報源を選んでストックすることが成功の鍵です。
3つ目。Gem × NotebookLM連携は、Google Workspace管理者がNotebookLMを有効にしている必要があります。自社の環境で使えない場合は、IT担当者や管理者に設定を確認してください。
まとめ
AI社長は、中小企業の経営者にとって「いつでも相談できる壁打ち相手」を手に入れる手段です。偉大な経営者の判断基準や思考パターンを、自分のビジネスの文脈に合わせて活用できる。しかもGoogleの無料ツールだけで構築できます。
まずは自分が尊敬する経営者をひとり選んで、試してみてください。意思決定の質が変わる実感を得られるはずです。
「AIをビジネスにどう活かすか」についてもっと詳しく知りたい方は、AI-Brainの無料相談をご利用ください。石川県の中小企業に特化したAI活用のアドバイスを行っています。
無料相談(30分)はこちら
人気の記事
記事を読む
TOPICS
2026/02/26
【石川県】賃上げ補助金で「生成AI研修」も対象に。最大600万円の使い道を徹底解説
筆者/喜多 辰徳
#ニュース
記事を読む
TOPICS
2025/12/14
株式会社AI-Brain、株式会社デジライズと包括的業務提携を締結
筆者/喜多 辰徳
#ニュース
記事を読む
TOPICS
2026/01/22
読者アンケート回答で「Instagramアルゴリズム攻略ガイド」をGET
筆者/喜多 辰徳
#アンケート
記事を読む
TOPICS
2026/02/20
【760例から厳選】南陽市の生成AIプロンプト集、自治体・企業のAI担当者が最初に試すべき10選
筆者/喜多 辰徳
#ChatGPT
#プロンプト
#自治体事例