会議が終わったあとに、今日は一言も話さなかったと気づく日があります。議題の経緯がよく分からないまま話が進み、何か言ったほうがいいと思いながらタイミングを逃し、気づけば解散しています。
発言できない原因は、性格でも度胸でもありません。議題の文脈が頭に入っていないからです。人は、経緯を知っていて自分との接点が見えている話題なら、放っておいても言いたいことが出てきます。背景が曖昧な議題には、誰も意見を持てません。
つまり発言力は、準備で作れます。この記事では、Googleの無料AIツールに会議ごとの記憶を持たせて、前夜と会議直後に流すだけの8つのプロンプトを紹介します。
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Gemini Notebookは名前が変わったばかりのツールです
先に、名前の話を片づけます。
このツールは、2026年7月16日までNotebookLMという名前でした。Googleが同日、Gemini Notebookへの改称を発表しています。同じ製品の改称で、既存のノートブックを作り直す必要はありません。共有リンクも自動リダイレクトで動き続けます。ユーザー側の作業はなく、画面上の名前とロゴが順次切り替わるだけです。
ネット上の解説記事はまだ旧名で書かれたものが多いので、検索するときは旧名も併用すると情報が見つかりやすくなります。この記事では、現行の名称であるGemini Notebookで統一します。
なぜ会議の準備に向いているのか
このツールが会議に向いている理由は、自分が入れた資料の中だけで答えるという性質にあります。
一般的なチャットAIは、世の中の知識から一般論を返します。会議の準備で欲しいのは一般論ではなく、自分の職場の3週間前に何が決まったかです。入れた議事録だけを読んで答えるツールのほうが、この用途には合います。

会議秘書の作り方は「1会議 1ノートブック」だけ
やることは、会議体ごとにノートブックを1つ作ることです。名前は会議名そのままで構いません。営業定例ノート、〇〇プロジェクト会議ノート、といった具合です。
入れる資料は3種類
・過去の議事録(あるだけ全部。なければ今回の分から始めます)
・アジェンダと当日配布された資料
・計画資料(ロードマップ、目標が書かれたもの)
要するに、その会議に関係する資料を1か所に集めるだけです。
Googleドライブのファイルは自動で同期されます
議事録をGoogleドキュメントで管理しているなら、ここが効きます。Googleドライブから取り込んだソースは自動的に更新され、数分ごとに同期されます。すぐに反映させたいときは、ソースを開いてGoogleドライブと同期をクリックすれば即座に更新できます。
つまり、いつもどおり議事録を保存するだけで、ノートブックの記憶が勝手に増えていきます。
無料でどこまでできるか
無料で使い始められるStandardプランの上限は、Googleの公式ヘルプに明記されています。
・ノートブック数:1ユーザーあたり100件
・ソース数:1ノートブックあたり50件
・チャット回数:1日50回 ・音声解説:1日3件
会議1つにつきノートブック1冊なら、100件はまず余ります。ソース50件も、週次の会議で1年分の議事録を入れてようやく届く水準です。
注意したいのは1日50回のチャット上限です。後半で紹介する壁打ちを何度も往復すると、意外に早く到達します。前夜の準備でしっかり使う日は、日中の雑多な質問を別のAIに回すと安全です。
社内資料を入れる前に、扱いを決めます
ここは飛ばさないでください。会議の議事録は、社内でもっとも生々しい情報が載っている資料です。
Googleの公式ヘルプによれば、個人アカウントの場合、アップロードしたファイルや生成された出力は、ユーザーがフィードバックを送信しない限り、基盤モデルのトレーニングに直接使用されることはありません。ここでいうフィードバックとは、回答に対する高評価や低評価のボタンです。押すと、関連する内容が収集され、訓練を受けたチームによるレビュー対象になります。
職場や学校のGoogle Workspaceアカウントであれば、扱いはさらに固くなります。アップロードした資料、入力した質問、AIの回答は、フィードバックを送った場合でも人間のレビュアーによる確認は行われず、AIモデルのトレーニングにも使用されません。
実務としての結論は3つです。
・会社の資料を扱うなら、個人アカウントではなく職場のWorkspaceアカウントを使う
・社内資料を入れたノートブックでは、評価ボタンを押さない
・取引先名や未公開の金額が入る議事録は、事前に上長か情報管理の担当者へ一度確認する

3つ目を面倒だと感じるかもしれませんが、順序が逆になったときの後始末のほうがずっと面倒です。
会議の前夜に使う4つのプロンプト
ここからが本題です。まず前夜の4本を紹介します。
この4本には共通の設計があります。根拠となった記述を必ず示させることと、資料に書かれていないことを推測させないことです。会議の準備で最も危ないのは、AIがもっともらしく埋めた空白を、自分の記憶だと勘違いして持ち込むことだからです。
1.経緯を頭に入れる
明日のアジェンダをノートブックに追加してから、これを流します。
このノートブックのすべてのソースを読んで、明日の「〇〇会議」に向けた
下調べをしてください。次の3つに分けて整理します。
1. これまでの流れ(時系列で。いつ、何が議題になり、どう動いたか)
2. すでに決まったこと(決定内容と、決まった時期)
3. まだ決まっていないこと(保留になっている理由と、次に動く番の人)
ソースに書かれていないことは推測せず、「記載なし」と書いてください。
それぞれの項目に、根拠にしたソース名を添えてください。読むときのコツは、3番目を重点的に見ることです。決まったことは報告されて終わりますが、決まっていないことは明日また議論されます。発言の機会は、そこに集まっています。
2.自分の持ち場を洗い出す
私はこの会議で〇〇を担当しています。
過去の議事録と資料から、次の3点を洗い出してください。
1. 私が前回までに引き受けたまま、完了を報告していない宿題
2. 明日の会議で私が報告すべき進捗
3. 私の担当範囲に関係するのに、まだ誰も触れていない論点
「私が引き受けた」と判断した根拠の記述を、そのまま引用してください。忘れていた宿題に前夜のうちに気づけるだけでも、この1本には価値があります。
3.発言の下書きを作る
明日のアジェンダとこれまでの経緯を踏まえて、
〇〇担当の立場から会議に出せる材料を5つ用意してください。
意見・質問・懸念のいずれかに分類し、次の形式で書いてください。
・種類(意見/質問/懸念)
・ひとことで言うと(40字以内)
・そう言える根拠(ソースのどの記述からそう考えたか)
・想定される反応
会議を前に進める材料に絞り、感想や一般論は入れないでください。4.反論を先に浴びておく
出して終わりにせず、往復します。
さきほどの3つ目の発言案について、壁打ちに付き合ってください。
1. この意見に反対する人がいるとしたら、どの立場の人が、どんな理由で反対しそうですか
2. その反論に、私はどう答えるのが筋が通りますか
3. この意見を、もっと短く、角を立てずに言い直すとどうなりますか
ソースの中に反対材料になりそうな記述があれば、それも指摘してください。発言が怖い理由は、言ったあとに何か返されることです。それなら、返される内容を前夜に浴びておけば済みます。当日に反論が来ても、一度戦った相手との再戦になります。
会議のあとに使う4つのプロンプト
会議が終わったら、録音データか、その文字起こしをノートブックに追加して4本流します。ここは手早くて構いません。
5.議事録を作る
今日の会議の記録から、議事録を作ってください。次の4部構成にします。
1. 決まったこと(誰が、何を、いつまでに)
2. 決まらなかったこと(理由と、次回への持ち越し内容)
3. 議論が分かれた点(誰がどの立場だったか)
4. やることの一覧(担当者と期限つき)
決まったことと決まらなかったことは、絶対に混ぜないでください。
期限が話に出ていない項目には、「期限の言及なし」と書いてください。できあがった議事録をノートブックに保存すると、秘書の記憶が今日の分だけ賢くなります。
6.自分のタスクと、発言への反応を回収する
今日の議事録から、次の2つを取り出してください。
1. 私が担当することになったタスクと期限。着手が早いほうから順に並べる
2. 私の発言に対して、誰がどう反応したか(賛同、追加の質問、反対、反応なし)
2については、反応がなかった発言も「反応なし」として残してください。後半がこの記事ならではの部分です。自分の発言がどう受け取られたかを記録に残すと、次の準備の材料になります。反応がなかった発言を残すのは、そこにこそ改善点があるからです。
7.置き去りの課題を拾う
このノートブックのすべての議事録を横断して、
一度は話題に出たのに、その後どうなったか分からないまま
止まっている件をすべて洗い出してください。
それぞれについて、最後に触れられた時期と、止まっている理由の推測を添え、
次回会議のアジェンダ案としてまとめてください。「そういえば、あの件はどうなりましたか」という質問は、会議でいちばん出しやすく、いちばん感謝される発言です。次回の発言材料が、ここで1つ手に入ります。
8.プロジェクトの現在地を更新する
計画資料と今日の議事録を突き合わせて、
このプロジェクトの現在地を整理してください。
1. 当初の予定に対して、進んでいる項目と遅れている項目
2. 遅れている項目について、資料から読み取れる理由
3. 数字の目標があれば、その進捗
資料から読み取れないことは推測せず、「資料からは判断できない」と書いてください。目の前の議題だけでなく全体の位置を把握している人の発言は、自然と一段深くなります。
出てきた答えを、そのまま読み上げないでください
最後に、いちばん大事なことを書きます。
3番目のプロンプトで出てくる5つの発言案を、会議でそのまま読み上げてはいけません。読み上げた瞬間、それは自分の意見ではなく、AIの出力を代読しただけになります。反論されたときに一歩も動けません。
正しい使い方は、眺めて選び直すことです。これは確かに聞きたい、いや自分ならこう思う、と取捨選択する。この作業そのものが、文脈を自分の中に落とし込む工程です。
5つを眺めているうちに、6つ目が浮かんでくることがあります。それが自分の意見です。AIが出した5つは、6つ目を引き出すための踏み台だと考えてください。
時短は、楽をするためのものではありません。作業を減らして空いた時間を、成果が動く場面に注ぎ直すためのものです。会議は、その注ぎ先として最も分かりやすい場所です。

よくある質問
Q1. 無料のままで足りますか。
週1回の定例を数本抱える程度なら足ります。無料のStandardプランはノートブック100件、1ノートブックあたりソース50件です。先に上限へ届くのは1日50回のチャット回数なので、前夜に集中して使う日だけ意識してください。
Q2. 録音や文字起こしがなくても使えますか。
使えます。会議後の4本は文字起こしがあると精度が上がりますが、手元のメモをテキストとして貼り付けるだけでも動きます。前夜の4本については、過去の議事録さえあれば録音は不要です。
Q3. 会社の資料を入れて問題ありませんか。
職場のGoogle Workspaceアカウントであれば、アップロードした内容が人間のレビューやAIモデルの学習に使われることはないとGoogleが明記しています。個人アカウントの場合は、評価ボタンを押さない運用にしてください。取引先名や未公開の金額を含む資料は、事前に社内の担当者へ確認するのが確実です。
Q4. ChatGPTやClaudeでも同じことができますか。
同じ操作はできますが、向き不向きがあります。ここで紹介した使い方の肝は、自分が入れた議事録だけを読んで答えさせることです。資料を固定して積み上げていく用途では、ノートブック型のほうが扱いやすくなります。
Q5. NotebookLMという名前で作ったノートブックはどうなりますか。
そのまま使えます。作り直す必要はなく、共有していたリンクも自動リダイレクトで動き続けます。ユーザー側の作業はありません。
まとめ
要点は3つです。
・会議体ごとにノートブックを1冊作り、議事録と資料を集める
・前夜に4本のプロンプトで、経緯と持ち場と発言案と反論を用意する
・会議後に4本のプロンプトで、議事録とタスクと積み残しと現在地を回収する
まずは次の定例1つだけで試してください。全部の会議に広げるのは、一度試してからで間に合います。
会議で発言できないのは、性格の問題ではありません。準備できる仕組みがなかっただけです。
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