AIの使い方は分かってきたものの、自分の仕事のどこで使えばいいのかが見えない。そう感じている方は少なくありません。第5回までに議事録の自動化やChatGPTとClaudeの使い分け、業務ツールづくりの入口を学んできた中部地質株式会社のAI研修は、第6回で全員が小さな業務アプリを作り、直し、試しました。研修の進め方を「現場の業務起点」に切り替える節目の回でもあります。
石川県の地質調査・地盤コンサルタントである同社の選抜メンバー7名が参加した、第6回(2026年9月29日開催)の様子をレポートします。
開催概要
・日時:2026年9月29日(火)
・主催:中部地質株式会社
・講師:柏野 真吾(株式会社AI-Brain 代表取締役)/木元 拓(同 公認パートナー・ハンズオン進行)
・テーマ:小さな業務アプリを作る・直す・試す
・参加者:中部地質株式会社 生成AI活用選抜メンバー(7名)
・回数:全12回プログラムの第6回
ゴールは「自分で動かせるアプリを一つ」作ることです。動く、一か所直せる、三つの動作テストに合格する、の三つが完成の目安とされました。
新機能の情報は毎週届く。だから自分の手で作る
冒頭で柏野は、米中がAIをめぐる対話の場の新設で合意したこと(米国側の呼称は「スーパーインテリジェンス(SI)」、2026年9月25日発表)や、孫正義氏がSoftBank World 2026で示した「2040年にAIが世界GDPの約20%を占める」という予測を紹介しました(ソフトバンク公式講演レポート、2026年7月)。
一方で、新機能の追加はいまや週単位の出来事で、情報を受け取るだけでは仕事は変わりません。第6回は時間の大半を、自分の手で動くものを作る実習に充てました。
AIにはアプリを作らせ、アプリには決まった処理だけをさせる
作ったのは、現場名・日付・作業内容・気づきの四項目を入力すると、見出し付きの報告文に整えて表示する「現場報告ツール」です。AIはアプリを作るために使い、アプリ自体は入力内容を決まった書式に整えるだけという役割分担で、要約や専門的な判断、データ保存は対象外とされました。
全員が同じプロンプトを送り、架空のデータで動きを確かめました。プロンプトには、空欄は「未入力」と表示して内容を補わないこと、外部通信や保存機能を使わず一つのHTMLファイルで動かすことが明記されています。単体で動く簡単な形に絞るための指定です。
一回で完成させず、一つずつ直して、両方を確かめる
木元は、最初の画面に「Wordで出力できるように」と追加で頼み、出力ボタンを付けた例を見せました。使いやすさも現場との合い方も、対話を重ねて近づけていくのが基本です。
実習では「翌日の予定」の欄を、「今ある四項目と動作は変えないでください」と添えて追加しました。一度に変えるのは一つだけです。変更後は通常入力、空欄、長文と改行の三つのテストで、追加した機能と元の機能の両方を確認します。
試すと、報告者名の欄やスマホでの音声入力がほしいといった改善案も出てきました。木元は、先に必要な機能や情報をAIに洗い出させてから作ると精度が上がることを、保険代理店向けの報告書アプリで実演しています。
半年かけて自作された進捗管理アプリが手本になった
研修中には、参加メンバーの一人が半年ほどかけて試作を重ねた社内の進捗管理アプリを披露しました。以前の予定表アプリは入力が細かく修正しづらいため、定着しなかったことがきっかけです。各担当者が入力した案件の進捗を集計し、業務量や状況を一覧で把握できます。
柏野は、進み具合が見えないことによる問題を、見える化で解こうとした好例だと評価しました。以前ならシステム開発に大きな費用がかかったものを自分で作れるのが、生成AIの強みです。開発の経緯は、次回以降の研修で共有される予定です。
「作りたいもの」ではなく「面倒な業務」から探す
業務のどこでAIを使うかは、現場で働く人にしか見極められません。柏野は、「何を作りたいか」から考えるとハードルが高いため、いつも面倒だと思っている業務や毎回繰り返している業務から探すよう呼びかけました。
例として紹介されたのが、講演後のアンケートから相談希望者を抽出し、Gmailの下書きとカレンダーの空き時間に基づく日程候補をまとめて作らせる柏野自身の事例です。手作業なら貼り間違いに気を配りながら30分近くかかる作業で、送信前の確認は人が行います。領収書の写真から会計ソフト用のCSVを作る経費処理や、請求書のファイル名変更と宛名・金額の一覧化も紹介されました。
数分の改善でも、社員の人数分を合わせれば大きな時間になります。重い業務より、毎月発生する小さな業務から始めるほうが成功の確率は高いといいます。
アンケート結果と次回への展望
研修後のアンケートでは、内容が役立ったか、総合満足度のいずれも、回答者全員が上位の評価をつけました。障壁として最も多く挙がったのは「ハルシネーション(誤答)への対応・チェックの手間」です。空欄を勝手に補わせない今回のツールは、この不安に作り方の段階で応える考え方でもあります。重要なテーマでは「具体的な企業や業務でのAI活用事例」が最多でした。

次回(第7回)は2026年10月22日(木)16:00〜の開催です。参加者は10月15日ごろまでに各自の「面倒な業務・繰り返している業務」を共有し、講師陣が実現方法を事前に検討して臨みます。研修は、現場の業務を起点に形にする段階へ移ります。次回以降のレポートも順次お届けしていきます。
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