商談から戻る車の中で、完璧な切り返しを思いつきます。あの場では出てこなかった言葉が、信号待ちで浮かんできます。営業をしている方なら、一度は経験があるのではないでしょうか。
この状態が続く原因は、練習量ではありません。練習の相手がいないことです。先輩に頼めば済む話ですが、忙しさを知っているぶん、2回目からはもう言い出せません。
ChatGPTの音声モードとプロジェクト機能を組み合わせると、この相手役をAIが引き受けてくれます。筆者も実際に声で試してみました。この記事では、作り方と、精度を一段上げるための資料の入れ方をお伝えします。
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足りないのは練習量ではなく、頼める相手です
営業の練習は、一人ではできません。読むだけでは口が動かないからです。本を読み、動画を見て、帰り道に一人で反省会をしても、答え合わせをしてくれる人がいません。
ただ、人に頼むには心理的なコストがかかります。「ロープレに付き合ってください」と言うことは、自分ができていないと申告することでもあります。だから頼めないのではなく、頼みたくないという状態が生まれます。

AIには、この申告が要りません。何度失敗しても、誰も見ていません。ここが、AIロープレの本当の価値だと考えています。
ChatGPTのプロジェクトに資料を入れて、声で商談します
ChatGPTのプロジェクト機能では、アップロードした資料の内容について、音声モードで会話ができます。この組み合わせが、ロープレの土台になります。
手順は4つです。
・ChatGPTでプロジェクトを新規作成します
・自社の営業資料をプロジェクトにアップロードします
・後述するプロンプトを1枚貼り付けます
・音声モードに切り替えて、商談を始めます

注意点が1つあります。会社のワークスペースで音声モードが無効になっている場合、プロジェクト内でも音声は使えません。組織で導入している方は、管理者の設定を先に確認してください。
何を読み込ませるかで、採点の基準が変わります
ここからが本題です。多くの解説記事は「営業資料を入れましょう」で止まっていますが、入れる資料の種類によって、AIの採点基準そのものが変わります。
商品資料だけを入れると、採点はこうなります
AIが持てるのは商品知識だけです。客役の質問は鋭くなりますが、採点は「商品を正しく説明できたか」に寄ります。一般的な営業論で採点されている状態です。
営業マニュアルまで入れると、採点はこう変わります
採点の基準が、自社の型に変わります。「うちのやり方に沿えていたか」で評価されるようになり、ここではじめてチーム全体の底上げという話が成立します。
入れる優先順位は次のとおりです。
・切り返し集や想定問答を最優先で入れます。客役の粘り方が一気に本物に近づきます
・トークスクリプトや商談の流れを入れると、順番を守れたかが採点対象になります
・過去の失注理由のリストがあれば、客役が実際に断られた理由で断ってくるようになります
・提案書や商品資料は、その次で構いません

社外のサービスに自社の資料を渡すことになるので、会社の情報を入れる前に、契約しているプランのデータ利用設定を確認しておいてください。
マニュアルがない場合は、ロープレで作ります
とはいえ、営業マニュアルが整っている職場ばかりではありません。営業が数人という職場や個人事業では、そもそも存在しないほうが普通です。
その場合は、順番を逆にします。ロープレを何本か回して、うまくいった返しをAIに拾わせ、言語化してもらいます。「今の商談で有効だった対応を、次の人が再現できる形で書き出してください」と頼めば、マニュアルの原型ができます。

マニュアルがないから練習できないのではなく、練習しながらマニュアルのほうを作っていきます。この使い方は、教える人がいない環境ほど効いてきます。
コピーして使えるプロンプトを置きます
プロジェクトに資料を入れたうえで、以下をそのまま貼り付けてください。
あなたは私の営業ロープレの相手役です。
【設定】
・あなたの役:このプロジェクトにアップロードした資料の商品やサービスを検討している見込み客
・相手の業種、役職、予算感、検討段階:(ここに書く。空欄の場合は私に3つ質問して決めてください)
・難易度:中級(初級=好意的/中級=比較検討中で慎重/上級=すでに他社に傾いている)
【進め方】
1. 「本日はお時間ありがとうございます」から始め、あなたは客として応答してください
2. 私が答えるまで、次の話題に進まないでください
3. 一度の発言は2〜3文までにしてください
4. 私が詰まっても助け舟を出さないでください。客として自然に沈黙するか、話題を変えてください
5. 私が「終了」と言うまで役を続けてください
【終了後に出すもの】
・100点満点の点数と内訳(ヒアリング/価値の伝達/反論対応/クロージングの4項目×25点)
・良かった発言を3つ、原文のまま引用
・改善すべき発言を3つ、「私の発言→こう言えばよかった」の形で
・私が聞けていなかった重要項目のリスト
・商談レポート(相手の課題/予算/決裁者/次回アクション。聞けていない項目は「未確認」と書く)
【採点の基準】
一般論ではなく、このプロジェクトにアップロードした資料に書かれた自社の型を基準に採点してください。資料に記載のない進め方をした場合は、その点を指摘してください。よくある質問
Q. テキストでのやり取りではだめでしょうか。
A. 準備段階ならテキストでも構いません。ただし商談は声で行う仕事なので、詰まる場所が変わります。声で練習したほうが本番に近くなります。
Q. 会社で使っていますが、音声が出てきません。
A. ワークスペース単位で音声モードが無効化されていると、プロジェクト内でも使えない仕様です。管理者の設定を確認してください。
Q. 営業マニュアルがなくても始められますか。
A. 始められます。商品資料だけでも練習にはなります。そのうえで、ロープレの内容からマニュアルを作っていく進め方をおすすめします。
Q. 営業以外にも使えますか。
A. 面接の練習や社内プレゼンの想定問答にも同じ形が使えます。役割と採点基準を差し替えるだけです。
まとめ
要点は3つです。
・AIロープレの価値は機能ではなく、人に頼まなくてよくなることにあります
・営業マニュアルまで読み込ませると、採点の基準が自社の型に変わります
・マニュアルがなければ、ロープレを回しながら作っていけます
まずは手元の資料を1つ入れて、5分だけ声で試してみてください。詰まる場所が、そのまま伸びしろです。
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