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2026/10/29

社内のAI導入の進め方|1チームで試し四半期で見直す4手順

筆者/喜多 辰徳

社員全員にAIのアカウントを配ったのに、半年たっても仕事の流れが前と変わっていませんか。使っている人は使っているのに、会社としての成果が見えないままという状態です。

原因はツールの性能ではなく、配り方と、その後の仕事の組み方にあることがあります。この記事では、海外の経営者がForbesに寄せた導入の振り返りをもとに、地域の会社が社内でAIを根づかせるための4つの手順を整理します。読み終えるころには、来週どのチームから始め、何を測るかを決められるはずです。

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AIツールを全員に配っただけでは、仕事の流れは変わらない

2026年10月6日、Forbesの経営者向け寄稿欄に、金融・暗号資産の取引向けにシステムを提供するIT企業B2BROKERの創業者、Arthur Azizov氏の記事が掲載されました。日本語版は10月19日にForbes JAPANで公開されています。

Azizov氏は、全社員がAIを使えるようにしても会社の働き方はあまり変わらなかった、と振り返っています。個人がAIを使うことと、会社がAIを取り入れることは別のものだという指摘です。

会社として取り入れるには、チームの組み方、仕事の受け渡し、責任の持ち方、日々の習慣まで変える必要があります。ツールの購入は、その長い作業の最初の一歩にすぎません。

ここから先は、寄稿の教訓を4つの手順に分け、地域の会社に置き換えて説明します。


手順1 最初は1つのチームだけで始める

寄稿では、全部署で同時に始めたために、何が効いているのか分からなくなった反省が書かれています。1つのチームに絞ってから、成果を比べられるようになったそうです。

最初のチームの選び方

最初のチームは、次の3つがそろうところを選びます。

・新しい道具を試すのが好きな人がいる

・毎週くり返す作業がある(見積書、日報、問い合わせへの返信など)

・作業の結果を数えやすい(件数、かかった時間など)

寄稿でも、導入を引っ張るのは経営者ではなく、試すことに前向きな現場の人がよいとしています。経営者は方向と目標を示し、細かいやり方は道具に近い人に任せる形です。

比べるのは4つ

始める前と後で、次の4つを記録しておきます。

・成果物の量(作った書類や返信の数)

・かかった時間

・仕上がりの質(直しの回数など)

・かかった費用

AIを使う前の数字は、始める前に必ず取っておきます。前の数字がないと、良くなったのかどうかを誰も判断できません。


手順2 計画は3年ではなく3か月単位で立てる

AIの道具は数か月ごとに大きく変わります。寄稿では、3年先までの計画はすぐに古くなるとして、四半期(3か月)ごとに目標・測るもの・予算を決め、主要なAIモデルが新しく出るたびに見直すことを勧めています。

地域の会社なら、次のような1枚の表で十分です。

・この3か月で試す作業

・担当するチームと引っ張る人

・測るもの(手順1の4つ)

・使ってよい費用の上限

・見直す日

表をゼロから作るのが手間なら、次の依頼文をChatGPTやClaudeに貼り、自社の状況を書き足して使ってください。

あなたは社内のAI導入を手伝う担当者です。
次の条件で、3か月分のAI導入計画を表にしてください。

会社の業種:
最初に試すチーム:
そのチームが毎週くり返している作業:
いまその作業にかかっている時間(分かる範囲で):
使ってよい月の費用の上限:

表の列は「試す作業」「担当者」「測るもの」「AIを使う前の数字」「見直す日」にしてください。
分からない項目は空欄のままにし、推測で埋めないでください。

手順3 役割と確認の流れを書き換える

寄稿のなかで、Azizov氏がもっとも強く書いているのがこの点です。導入から1年たっても、仕事の分担表、承認の手順、報告の流れが前と同じなら、AIは古いやり方の上に乗っているだけだ、と述べています。

Azizov氏の会社では、職種の境目を見直して1人が受け持つ範囲を広げ、仕事の受け渡しを減らしたそうです。

地域の会社に置き換えると、たとえば次のような見直しになります。

・見積書を営業が下書きし、事務が清書し、課長が確認していた流れを、営業がAIで清書まで仕上げ、課長の確認1回にする

・問い合わせへの返信を「担当者が書く→上司が読む」から「AIが下書き→担当者が直して送る→上司は週1回まとめて読む」に変える

・会議の議事録係をなくし、AIのまとめを全員で確認する形にする

どれも、AIを使うだけでなく「誰が何を確認するか」を書き換えている点が共通しています。分担表を書き換えないままだと、浮いた時間がそのまま別の確認作業に回ってしまうことがあります。


手順4 お金と頭の負担が増える前提で決めておく

寄稿の3つ目の教訓は、AIは役に立つほどお金がかかる、という点です。Azizov氏の会社でも、使う人が増え、性能の高いモデルを選ぶ社員が増えたことで、AIへの支出が大きく増えたと書かれています。

どの作業にどのAIを使うかを決める

Azizov氏は、どの依頼をどのモデルに回すかのルールを、請求書に追い立てられる前に会社で決めておくよう勧めています。そもそもAIを使わなくてよい作業もある、という指摘もあります。

地域の会社なら、まず次の3段階に分けるところから始められます。

・AIを使わない作業(決まった定型文のコピーなど)

・無料版や軽いモデルで足りる作業(短い文の言い換え、要約)

・有料の高性能なモデルを使う作業(提案書の構成、長い資料の読み込み)

予算も、月額の固定費だけでなく、使った量に応じて増える前提で組んでおきます。

確認する人の負担を見ておく

もう1つ見落とされやすいのが、頭の負担です。AIは手作業を減らす一方で、頼む内容を決める、作業を細かく分ける、大量の出力を読んで確かめる、といった考える仕事を増やします。

寄稿でも、この負担がかかるのは仕事のできる社員だと書かれています。その人に確認が集中していないか、手順2の見直しの日に必ず聞いてください。


地域の会社が読むときの注意

この寄稿は、金融・暗号資産向けのIT企業の経営者が自社の経験を書いた意見記事です。開発の速さや支出の伸びについて具体的な倍率も書かれていますが、その会社の内部の数字で、外部の検証はありません。自社の見込みとして使わないほうが安全です。

また、エンジニアが多い会社の話なので、職種の境目をなくす部分は、そのまま当てはまらない会社もあります。取り入れやすいのは、1チームから始める、3か月で見直す、使い分けのルールを決める、の3つです。

社内ルールづくりから始めたい場合は、生成AIの社内ルールのひな形をまとめた記事もあわせて読んでください。AIで浮いた時間を売上につなげる考え方は、浮いた時間が消える理由をまとめた記事で扱っています。


よくある質問

Q. 全員に配ってしまった後でも、1チームからやり直せますか

やり直せます。配ったアカウントは止めずに、1つのチームだけ「測るもの」と「見直す日」を決めて試してください。比べる相手がいれば、ほかのチームとの違いも見えるようになります。

Q. 社員が10人ほどの会社でも、チームを分ける意味はありますか

あります。部署がなくても、営業の2人、事務の2人のように作業ごとに分ければ同じ考え方が使えます。まずは毎週くり返す作業を1つ選ぶところから始めてください。

Q. AIの費用はどれくらい見ておけばいいですか

使う人数と作業の量で大きく変わるため、決まった目安はありません。最初の3か月は上限を決めて実際の金額を記録し、次の計画で見直す形をおすすめします。

Q. 分担表を変えると社員に反発されませんか

いきなり全社で変えず、手順1のチームで試した結果を見せてから広げると受け入れられやすくなります。何の作業が減り、何の確認が増えるのかを先に説明しておくことも大切です。


まとめ

AIは配っただけでは会社の仕事の流れを変えません。押さえる点は次の3つです。

・1つのチームで始め、使う前の数字を取ってから比べる

・計画は3か月ごとに立て、新しいモデルが出たら見直す

・分担表と確認の流れ、費用のルールまで書き換える

まずは来週、最初に試すチームと、毎週くり返す作業を1つ決めてください。

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