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2026/07/09

AIの精度を上げるプロンプト術|最新モデルより先に頼む順番

筆者/喜多 辰徳

日曜の夜、来週の商談用にとAIへ「うちの強みをまとめた提案書を作って」と頼む。3分でそれらしい文章は出てくる。ところが読み返すと、どこの会社にでも当てはまる当たり障りのない内容で、これでは他社と差がつきません。

こういうとき、つい「もっと高いプランや最新モデルに変えれば解決するのでは」と考えがちです。でも、その前に見直したいのは頼み方の順番です。この記事では、今使っているAIのまま成果物の質を引き上げる、5つの役割と3周の頼み方を紹介します。

▼記事を3分で理解できる!マンガ風スライドはこちら


なぜAIの答えは「それっぽい」で止まるのか

多くの人はAIを、普通のチャット相手として使っています。「〜を作って」と一度お願いして、出てきたものをそのまま受け取る。これだと、AIは一番無難な答えを最初に返すので、当たり障りのない内容で止まります。

腕のいいAIほど、本当は違う使い方で力を発揮します。長めに考え、作業を分け、途中で自分の答えを疑い、別案を出し、最後にまとめ直す。この往復の粘りが質を決めます。たとえばClaudeの無料版・Proの標準モデルであるSonnet 5も、一度きりの質問より、工程を踏ませたほうが結果が変わります。

つまり、変えるべきはモデルより先に、頼み方の順番だということです。


AIに「5人の担当者」を割り当てて3周させる

頼み方の順番を、社内に5人の担当者がいると見立てて組み立てます。

5つの役割

・戦略家:誰に何を届けるか、勝ち筋を考える担当

・設計者:完成までの段取りと、必要な材料を整理する担当

・生成者:実際に成果物をつくる担当

・破壊者:できたものを褒めず、弱点を叩く担当

・仕上げ屋:公開・提出できる状態まで整える担当

3周のしくみ

この5人を、一度で終わらせず3周まわします。1周目で方向性をつくり、2周目で弱点を壊し、3周目で完成形にします。頼むときは「5つの役割を順番に実行し、全体を3周してください」と一文添えるだけで、AIが考えるモードに入ります。

ここからは、この中でも効果が大きい3つのコツを紹介します。


コツ1 作らせる前に「勝ちの条件」を決めさせる

一番やりがちな失敗が、いきなり本文や資料を作らせることです。最初に決めるべきは成果物ではなく、勝ちの条件です。

たとえば提案書なら、本文を書く前にこう頼みます。

まだ提案書の本文は書かないでください。
先に、この提案が「うまくいった」と言える条件を整理してください。

・読み手が興味を持つ理由
・読み手が手元に残しておきたくなる理由
・読み手が反論しそうな点と、それへの返し
・絶対に言ってはいけない主張
・100点満点の採点基準

テーマ:(あなたの案件)
読み手:(相手の立場)

勝ちの条件を先に言葉にしておくと、そのあとの成果物が驚くほど芯を持ちます。特に「絶対に言ってはいけない主張」まで出させるのがコツです。


コツ2 いきなり1案で決めず、3案出させてから選ぶ

AIの出力が弱い人は、たいてい1案目をそのまま使っています。1案目は無難な分だけ弱いことが多いのです。そこで、方向性を3つ出させてから選びます。

同じテーマで、方向性を3案出してください。

A案:一番わかりやすい案
B案:一番思い切った案
C案:一番手元に残したくなる案

それぞれの見出し、書き出し、強み、弱みを並べ、
最後に一番伸びそうな案を1つ選んで理由を教えてください。
無難な平均案に逃げないでください。

選択肢をつくってから選ぶ。これだけで、最初の無難な案に引きずられなくなります。


コツ3 いちばん効くのは「褒めるな、壊せ」

ここが本題です。AIは基本的に親切なので、そのまま感想を求めると褒めてしまいます。褒められても成果物は強くなりません。必要なのは、レビューではなく容赦ない指摘です。

あなたはいまから、この成果物を叩く担当です。
褒めるのは禁止、良いところ探しも不要です。

・致命的な弱点はどこか
・どこが借り物めいて聞こえるか
・読み手が離れるのはどの一文か
・削るべき箇所と、足すべき箇所
・書き直し案
・100点満点での再採点

「レビューして」では弱く、AIは優しく返します。作る、疑う、壊す、直す。この往復こそが、成果物を「それっぽい」から抜け出させます。


頼む順番をひとまとめにした型

最後に、ここまでを一つの頼み方にまとめます。仕事の内容を差し替えて使えます。

あなたは普通のチャット相手ではなく、5人の担当者からなる制作チームです。
目的は、早く答えることではなく、そのまま使える成果物をつくることです。

1 戦略家:誰に何を届けるか勝ち筋を出す
2 設計者:段取りと必要な材料を整理する
3 生成者:成果物をつくる(必ず3案出して比べる)
4 破壊者:褒めずに弱点を叩く
5 仕上げ屋:提出できる状態に整える

これを3周してください。1周目で方向性、2周目で弱点つぶし、3周目で完成。
まず成果物より先に「勝ちの条件」と「採点基準」から始めてください。

テーマ:(  )
目的:(  )
読み手:(  )

よくある質問

Q1 高いモデルや最新モデルに変えなくて大丈夫ですか

まずは今使っているAIで、この頼み方を試してみてください。多くの仕事は、頼む順番を変えるだけで質が上がります。モデルの乗り換えを考えるのは、そのあとでも遅くありません。

Q2 3周も回すのは手間で、時間がかかりませんか

慣れれば、最初に型を貼り付けるだけです。手直しに追われる時間のほうが、結果的に長くなりがちです。まずは提案書やチラシなど、大事な1本で試すのがおすすめです。

Q3 どんな仕事に使えますか

提案書、チラシ文、お客様への案内、SNS投稿、あいさつ文など、文章仕事なら幅広く使えます。役割の名前を仕事に合わせて言い換えれば、応用がききます。

Q4 「褒めるな、壊せ」と頼むと、厳しすぎる結果になりませんか

厳しく感じても、それは直すべき点が見えたということです。すべてを受け入れる必要はなく、納得できる指摘だけ取り入れれば十分です。判断するのは自分だと考えてください。


まとめ

今回の要点は3つです。

・最新モデルに乗り換える前に、頼む順番を見直す

・作らせる前に勝ちの条件を決め、3案出させてから選ぶ

・いちばん効くのは、褒めさせず壊させること

まずは大事な1本で、この順番を試してみてください。今あるAIのまま、成果物は変わります。

▼3分で理解できる!マンガ風スライドはこちら


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