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2026/07/16

なぜ85%は使いこなせない?AIエージェント活用の3つの鍵 

筆者/喜多 辰徳

「AIエージェント」という言葉を、最近よく耳にするようになりました。ただ、正直なところ「うちには関係ない話だ」と感じている方も多いのではないでしょうか。実はその感覚は、半分は正解で、半分は間違いです。

この記事では、活用できている会社とそうでない会社の差がどこにあるのか、そして現場の事業者が今週から何を始めればよいのかを整理します。

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投資している会社の多くが、まだ使いこなせていない

データ連携サービスを手がけるFivetranが2026年5月に発表した「2026年版エージェント型AI準備度調査」は、なかなか考えさせられる内容でした。

エージェント型AIを本番業務で運用できる「データ基盤」が整っている企業は、わずか15%にとどまります。その一方で、回答企業の約60%が、すでに数百万ドル規模の投資をしていると答えています。

つまり、お金はかけている、けれども十分に活かせていない、という会社が大多数だということです。

なぜこうした状況が生まれるのでしょうか。そして、現場の事業者や非エンジニアの担当者は、何から手をつければよいのでしょうか。今回は、その差を埋めるための3つの取り組みを紹介します。


そもそも「AIエージェント」は何が違うのか

本題に入る前に、一点だけ整理させてください。

よく使われるChatGPTやClaudeのような会話AIは、基本的に「聞いたら答えてくれる」ツールです。人間が質問し、AIが回答します。

一方でAIエージェントは、「目標を与えると、自分で手順を考えて実行する」AIを指します。たとえば「来週の営業訪問リストを作って、担当者ごとにメールの下書きまで用意して」と指示すると、顧客データを調べ、予定を確認し、文面を作るところまで自分でこなします。

人間が動かすのではなく、AIが動きます。これがエージェントとのいちばんの違いです。

実際、OpenAIが2026年6月に公開した社内データによると、同社内でのAIエージェント「Codex」の利用は、2025年11月からの半年で研究部門が56倍、カスタマーサポートが32倍、エンジニアリングが27倍に伸びました。さらにエンジニア以外の一般利用者の利用は、この1年で約137倍に拡大しています。

波はすでに来ています。問題は、その乗り方です。


なぜ多くの会社は使いこなせないのか

うまく活用できていない会社には、共通するつまずき方が3つあります。

1つ目は、データが散らかったまま、AIだけを導入してしまうことです。AIエージェントは、与えられたデータをもとに判断し、行動します。そのデータが古かったり、別々のシステムに散らばっていたり、形式がそろっていなかったりすると、どれほど優秀なAIでも力を発揮できません。先ほどのFivetranの調査でも、活用できている15%とそれ以外を分けた最大の要因は、まさにこのデータ基盤の差でした。

2つ目は、「何でもできるはず」と期待しすぎることです。AIエージェントは万能ではありません。特定の業務に絞れば力を発揮しますが、あれもこれもと欲張ると、どれも中途半端になりがちです。

3つ目は、いきなり「完全自動」を目指してしまうことです。人間のチェックを一切入れずに自動化しようとすると、AIが判断を誤ったときの立て直しが難しくなります。信頼を積み上げる前に大きな失敗をして、「やはりAIは使えない」と結論づけてしまう例が少なくありません。


現場の事業者がまず取り組むべき3つのこと

前置きが長くなりました。ここからが本題です。「使いこなせている15%」に近づくために、今すぐできる3つのステップを紹介します。


ステップ1:AIに渡すデータを1か所に集める

難しく考える必要はありません。まずは、いちばんよく使う業務データが今どこにあるかを書き出すことから始めましょう。

たとえば、顧客情報はExcelに、売上は会計ソフトに、やり取りの履歴はメールに、という状態はよくあります。これをAIエージェントが使える形にするには、すべてを1か所に集めるか、少なくとも「どこに何があるか」をAIが参照できる状態にする必要があります。

最初の一手としておすすめなのは、社内でいちばんよく使うデータを一つだけ選んで整えることです。全部をいっぺんにやろうとしないことが大切です。

今週できるアクションとしては、よく使う顧客リストや商品リストをExcelやGoogleスプレッドシートにまとめ、項目名(列名)を日本語でそろえるところから始めてみてください。


ステップ2:「この業務だけ」と1つに絞って試す

AIエージェントを導入するとき、いちばん成功しやすいのは「繰り返し発生する、手順が決まっている業務」です。

たとえば、毎週の売上集計レポートを自動でまとめる、問い合わせメールへの初期返信文を自動で下書きする、競合の価格情報を定期的に調べてまとめる、といった業務です。

このうちどれか1つを選んで、まずはそこだけで試してみます。うまくいったら次の業務へ広げます。この「小さく試して横展開する」というサイクルが、使いこなせている会社に共通する進め方です。

今週できるアクションとしては、「この作業、毎回時間がかかるな」と感じている業務を1つ書き出してみてください。それが最初の候補になります。


ステップ3:人間が確認するタイミングを設ける

完全自動を目指さないことは、弱腰ではなく、正しい戦略です。

AIエージェントは優秀ですが、まだ完璧ではありません。とくに日本語の微妙なニュアンスや、社内ならではのルール・文化を理解するのは苦手な場合があります。

だからこそ、「AIがここまでやったら、人間が確認してから進める」というチェックポイントを、業務の流れの中に組み込むことが大切です。たとえば「メールの下書きはAIが作るが、送信前に担当者が必ず確認する」というだけでも、大きなミスのリスクをぐっと下げられます。

最初は「手伝ってくれるアシスタント」として使い、信頼が積み上がったら少しずつ任せる範囲を広げていきます。この段階的な進め方が、長い目で見た成功につながります。

今週できるアクションとしては、いま使っているAIツールで1つの業務を試し、「どこで人間が確認するか」のルールを決めてみてください。それだけで十分です。


よくある質問

Q. AIエージェントとChatGPTは、何が違うのですか。

A. ChatGPTのような会話AIは「質問に答える」ツールです。AIエージェントは「目標を与えると、自分で手順を考えて実行する」点が違います。調べる、確認する、作成するといった一連の作業を任せられます。

Q. うちのような規模でも、今から始めて意味がありますか。

A. あります。大切なのは大きく導入することではなく、よく使うデータを一つ整え、業務を一つ絞って試すことです。小さく始めるほど、失敗してもやり直しがききます。

Q. 完全に自動化しないと、効果は出ないのでしょうか。

A. そんなことはありません。むしろ人間の確認を残したほうが、大きなミスを防げます。まずはアシスタントとして使い、信頼できる範囲から少しずつ任せていくのが安全です。

Q. 何から手をつければよいか分かりません。

A. まずは「毎回時間がかかる」と感じている業務を1つ書き出してみてください。手順が決まっていて繰り返し発生する業務ほど、AIエージェントの最初の候補に向いています。


まとめ

「まだ早い」と感じているうちに、差は静かに広がっていきます。大事なのは完璧に使いこなすことではなく、小さく試して少しずつ慣れていくことです。

・AIに渡すデータを1か所に集める

・業務を1つに絞って試す

・人間が確認するタイミングを設ける

この3つから始めることが、使いこなせている15%に近づくいちばんの近道です。技術は毎月変わり、費用は下がり続けています。準備が整うのを待つのではなく、今週の一歩から始めてみてください。

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