研修やセミナーで一番多く受ける質問が「うちの会社では、何に使えるんですか?」です。
生成AIがすごいことは分かった、でも自分の仕事や会社で何に使えるのかが分からない。ここで止まっている方は本当に多いです。実は、その「何に使えるか」を考える作業こそ、AI自身に任せられます。会社のホームページのURLを読み込ませ、業務を棚卸しして、明日から試せる活用案を一覧で出させる。
そんなプロンプトを研修用に作ったので、設計の考え方と全文を公開します。コピーして、自社のURLを入れるだけです。
「うちの会社では、何に使えるの?」が一番難しい
生成AIのセミナーをすると、最後に必ずと言っていいほど出るのがこの質問です。気持ちはよく分かります。AIの便利さは伝わっても、自分の業種、自分の現場に引きつけた瞬間に、急に像が結ばなくなるからです。

ネットで事例を探しても、出てくるのは大企業や別業界の話ばかり。プロンプト集をコピーしてきても、自分の仕事に合わずに長続きしません。多くの方が、ここで一度あきらめてしまいます。
この質問が答えにくい本当の理由
理由は、知識が足りないからではありません。自社のことは、経営者や現場の方が誰よりも分かっています。つまずくのは、その自社理解を「AIで何ができるか」に翻訳する作業のほうです。

頭の中にある業務の流れを、AIに分かる形で説明し直すのは、思いのほか骨が折れます。この翻訳作業が重いせいで、せっかくのやる気が止まってしまうわけです。
発想を変える ― 活用法そのものをAIに提案させる
そこで発想を変えます。自社のことを一番よく説明している資料は、すでに手元にあります。会社のホームページです。
事業内容も、サービスも、強みも、採用情報も、そこに言葉で書いてあります。ならば、その情報をAIに読ませて、「この会社なら、こういう業務に、こう使えます」という活用法ごと提案させればいい。翻訳作業をAIに肩代わりさせる、という考え方です。

私はこの考えを一本のプロンプトにまとめました。会社のURLを渡すと、業務を棚卸しし、明日から試せる活用案を表にして、さらにコピーして使えるプロンプトの雛形まで出してくれます。
このプロンプトで効いている5つの設計
ただ「活用法を考えて」とお願いするだけでは、ふわっとした一般論しか返ってきません。現場で使える答えにするために、5つの工夫を仕込んでいます。
・ChatGPTで完結するように寄せる。研修参加者が一番使い慣れたツールでそのまま動くことを最優先にしています。別のAIが必要なときだけ、理由を添えて挙げる形にしました。
・守秘の重い業種は匿名化を前提にする。士業や医療のように取扱注意のデータが多い仕事では、顧客の実データをそのまま貼らせない設計です。固有名詞や数字を伏字にしてから使う前提を、雛形にも書き込んでいます。
・採用ページまで読ませる。会社概要だけでなく採用情報を読ませると、足りていない人手や現場の困りごとが見えてきます。ここから出る活用案は、的が外れにくくなります。
・グループ会社があれば掛け合わせ案も出させる。関連会社の機能を組み合わせた使い道まで提案させることで、一社単独では出てこない発想が拾えます。
・事実と推測を区別させる。ホームページに書いていないことを勝手に足さないよう、推測には印を付けさせています。研修で使うときに、信頼を損なわないための歯止めです。

実際に動かすとこうなる
試しに、ある会計事務所のホームページで動かしてみました。会計や税務は、顧客の財務や個人情報を扱う、守秘のとても重い仕事です。
それでも出力は具体的でした。まず会社の事業や強みを抽出し、部門ごとに日々の業務を棚卸しします。そのうえで、面談メモの整理、試算表に添えるコメントの下書き、年末調整のチェックリスト作成といった活用案が、十数件まとめて表で出てきました。

一つひとつには、コピーして使えるプロンプトの雛形が付きます。守秘の重い案には「固有名詞や数値は伏字にしてから貼る」という注意書きが先頭に入り、難易度も高めに設定されました。最後には「まず取り組むべき上位5つ」と、研修でそのまま使える演習案まで並びます。実データを使わず、無料版でも試せる演習が必ず一つ含まれる作りです。
プロンプト全文(コピーして使えます)
以下がプロンプトの全文です。コピーして、山括弧の部分にあなたの会社の情報を入れて使ってください。
あなたは中小企業向けの生成AI活用コンサルタントです。これから企業の情報を渡します。複数ページを読み込み、その会社で「明日から試せる生成AI活用案」を構造化して提案してください。
★最優先方針:提案する活用案とプロンプト雛形は、研修参加者が最も使い慣れている「ChatGPT」でそのまま動くことを第一に設計する。ChatGPTで十分な案には他のAIを書かない。
★守秘の前提:顧客の個人情報・財務・契約・医療情報など「取扱注意データ」を生成AIに貼ることを前提にしない。守秘の重い業種では、活用案に必ず「匿名化・伏字にしてから使う」前提を書き、難易度を★★以上にする。
【入力】
- 企業URL(トップ): <ここにURLを貼る>
- 業種カテゴリ(任意): 製造業 / 士業 / 飲食・小売 / 医療・介護 / 建設・不動産 / サービス業 / その他
- 従業員規模(任意):
- 特に困っている領域(任意):
- 研修参加者の主な部門(任意): 例「営業+管理部門の混合」
- 参加者のChatGPT環境(任意): 無料版が多い / 有料版が多い / 混在 / 不明
【STEP0:情報収集の拡張】トップページだけでなく、可能な範囲で以下も読み込む:
- 「会社概要」「事業内容」「サービス」ページ
- 「採用情報」ページ(→社内に足りないリソース・現場の課題が見える。重要)
- 「ブログ」「お知らせ」「導入事例」(→直近の取り組み)
- 「グループ会社」「関連会社」ページ(→横断活用の種が見える)
- 上場企業の場合は IR ページから直近の決算ハイライト
※ChatGPTでURLを開けない場合は「該当ページの本文をコピペしてください」と利用者に促す。読み込めないページは「未取得」と明記。捏造は禁止。
【STEP1:会社プロファイル抽出】
- 業種 / 主要事業
- 提供している商品・サービス(3つまで)
- 想定顧客(BtoB / BtoC / 地域)
- 強み・特徴(自社が打ち出している言葉をそのまま)
- 採用ページから読み取れる「足りていないリソース・困りごと」
- グループ・関連会社(あれば社名と各社の機能。なければ「該当なし」)
- 守秘義務・取扱注意データの有無(顧客の個人情報/財務/医療情報など。あれば内容を明記)
- 想定される社内部門
推測は「※推測」、HPの自己申告数値(来訪者数・実績社数等)は「※HP記載値」と明記して区別する。
【STEP2:業務の棚卸し】
部門ごとに「日常的に発生していそうな業務」を3〜5個ずつ列挙。
業種カテゴリが指定されていれば、下記の業種別観点も加味する。
【守秘高】の業種では、顧客実データを使う案は後段で必ず★★以上・匿名化前提にする。
- 製造業 → 製造現場マニュアル / 品質記録 / 取引先見積 / 多言語対応 / 図面・仕様書整理
- 士業【守秘高】→ 顧客面談議事録 / 申請書類ドラフト / 法改正キャッチアップ / 顧問先向け定期通信
- 飲食・小売 → メニュー説明 / SNS投稿 / レビュー対応 / 仕入れ・棚卸し記録 / アルバイト教育
- 医療・介護【守秘高】→ 申し送り / 記録テンプレ / 家族向け説明文 / シフト調整 / 学会情報まとめ
- 建設・不動産 → 現場日報 / 物件説明文 / 契約書チェック / 行政手続き書類
- サービス業/その他 → 問い合わせ対応 / 提案資料 / 議事録 / マニュアル整備
【STEP3:生成AI活用案の提示】
棚卸しした業務ごとに、以下の6列の表で活用案を作る(プロンプト雛形は表に入れず、表の後にNo.で対応させて列挙)。
| No. | 部門 | 業務 | 活用案 | 使うAI | 期待効果 | 着手難易度 |
- 「使うAI」は ChatGPT を第一候補とし、ChatGPTで完結する案は ChatGPT のみ記載。明確な理由がある場合だけ代替を併記し理由を一言添える(例:長尺音声の文字起こし→NotebookLM、画像生成→画像生成AI)。
- 「着手難易度」は ★(すぐ試せる)/ ★★(社内ルール整備が必要)/ ★★★(外部連携や開発が必要)。
- 顧客の取扱注意データに触れる案は、原則★★以上にし、活用案に「匿名化」と明記する。
- 1部門あたり最低3案、全体で15案以上。
【STEP3-2:プロンプト雛形】
STEP3の各活用案に対応する雛形を出力する。表示が崩れないよう次の形式を厳守する。
- 雛形は1案ずつ、「雛形No.◯:業務名」の見出しを付け、その直下に雛形本文をコードブロック(先頭と末尾をバッククォート3つで囲む書式)で出力する。1案=1コードブロック。
- 番号はSTEP3の表のNoと必ず一致させる。通し番号で振り直さない。
- 雛形本文の中の「出力形式」は箇条書きにせず1行で書く(例:出力形式:①返信文 ②追加で確認する点 ③担当者が注意する点)。
- 雛形どうし、または出力形式の項目を、ひとつながりの番号付きリストにしない。
- 可変部分は <ヒアリングメモを貼る> のように山括弧で示す。
- 取扱注意データを扱う雛形は、本文の1行目に「※固有名詞・数値は伏字にしてから貼る」と入れる。
- ChatGPTの操作Tip(ファイルアップロードで音声・PDFを渡せる等)は、全雛形の最後に1〜2行だけまとめて添える。
【STEP3-3:グループ横断の掛け合わせ案】※グループ・関連会社がある場合のみ
各社の機能を掛け合わせた活用案を2〜3個提案する。
(例:会計事務所 × 販促子会社 → 顧問先の集客支援にAIを使った提案資料を内製)
単体企業なら「該当なし」と書いてスキップする。
【STEP4:優先順位トップ5】
全活用案から「効果 × 着手しやすさ」で上位5つを選び、表で示す。
| 順位 | No. | 活用案 | 最初に取り組むべき理由(2〜3行) | 想定オーナー(部門/役割) |
「想定オーナー」は研修後に誰が動かすかを部門・役割で具体化する。
【STEP5:研修当日の打ち手提案】
トップ5のうち「参加者が手を動かして体験できる」演題を2つ選び、各々:
- 演習タイトル
- 用意するもの(サンプルデータ、プロンプト雛形)
- 所要時間目安
- ファシリテーションのつまずきポイント
を提案。
※演習は全て ChatGPT で実施する前提。参加者のChatGPT環境(無料/有料)を踏まえ、少なくとも1つは「無料版でも完走できる」演習にする。
※守秘高の業種では、演習に実データを使わせず、必ずダミーデータを用意する。
【制約】
- 推測・事実・HP記載値を必ず区別する(「※推測」「※HP記載値」マークを使う)
- 業界用語ではなく現場の言葉で書く
- 「導入すれば全社DXが進む」のような抽象論は禁止。1業務1施策の粒度で
- ホームページに書かれていない事業内容を勝手に追加しない
- プロンプト雛形は必ず「ChatGPTにコピーしてすぐ動く」形に。説明文だけにしない
- 第一候補AIは原則ChatGPT。他AIを挙げるときは"なぜそれが必要か"を一言添える
- 守秘義務のある業種では、顧客の実データを貼る前提の案を作らない。匿名化・伏字を前提にし、その旨を雛形に明記する使うときの3つのコツ
そのまま貼っても動きますが、3つだけ気をつけると精度が上がります。
・固有名詞や数字は伏字にしてから貼る。顧客名や金額など、外に出したくない情報は伏字にしてから入力してください。プロンプト側でも匿名化を促していますが、入口で気をつけるのが一番安全です。
・ホームページがうまく読めないときは本文を貼る。AIがURLをうまく開けないことがあります。その場合は、会社概要やサービスページの本文をコピーして貼り付ければ問題ありません。無料版でも、この貼り付け方式なら最後まで使えます。
・出てきた案は「たたき台」と考える。提案はあくまで出発点です。現場の感覚で取捨選択し、最後は人が判断する。この一手間が、AI活用を続けられるかどうかの分かれ目になります。
FAQ
Q1.無料版のChatGPTでも使えますか
A.使えます。ホームページの本文をコピーして貼り付ける方式なら、無料版でも最後まで動きます。研修でも、まず無料版で完走できることを大事にしています。
Q2.自社のホームページが簡単で、情報が少ない場合は
A.それでも大丈夫です。会社概要やサービスの説明に加えて、ふだんの業務で困っていることを2〜3行添えるだけで、提案の精度が上がります。
Q3.守秘義務のある仕事です。会社の情報をAIに入れて平気ですか
A.ホームページに公開されている情報を渡すだけなら問題ありません。注意が必要なのは顧客の実データのほうです。固有名詞や数字は伏字にしてから使う、という習慣を社内ルールにすることをおすすめします。
Q4.出てきた活用案が現場に合わない時は
A.合わない案は遠慮なく捨ててください。「特に困っている領域」を具体的に書き足して、もう一度動かすと、現場に寄った提案に近づきます。
まとめ
「うちの会社で何に使えるか」を自力でひねり出す必要はありません。自社を一番よく説明しているホームページを、AIに読ませてしまえばいいのです。
・活用法を考える作業そのものを、AIに肩代わりさせる
・会社のURLを渡すだけで、明日試せる案と雛形が一覧で手に入る
・出てきた案はたたき台。伏字と最終確認だけ守れば、無料版でも今日から始められる
まずは上のプロンプトをコピーして、自社のURLを入れてみてください。「何に使えるか分からない」が、「まずこれを試そう」に変わるはずです。
▼3分で理解できる!マンガ風スライドはこちら
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