地質業界でもAIは使えるのか?中部地質株式会社・全12回AI研修の第1回レポート

筆者/喜多 辰徳

「専門性の高い業界では、AIは使えないのでは」――そう感じている経営者は少なくありません。地質調査・地盤コンサルタントとして石川県で実績を持つ中部地質株式会社は、その問いに向き合う形で全12回のAI研修プログラムをスタートさせました。第1回(2026年4月24日開催)の様子をレポートします。


開催概要

・日時:2026年4月24日(金) 16:05〜(約101分)

・主催:中部地質株式会社

・講師:柏野 真吾(株式会社AI-Brain 代表取締役)/喜多 辰徳(株式会社AI-Brain 副社長)

・テーマ:シャドーITとAI活用ガイドラインの重要性

・参加者:中部地質株式会社 社員9名(代表取締役・常務取締役を含む)

・回数:全12回プログラムの第1回


経営層から技術者まで、9名参加

第1回研修には、能島 利一 代表取締役、林 篤 常務取締役をはじめ、技術部・営業部・若手社員の9名が参加しました。「AIはまず経営層が触ってみないと、組織として推進できない」という考え方が背景にあります。

研修内で紹介されたパーソル総合研究所・中央大学の「労働市場の未来推計2035」資料によると、2035年には日本の生産年齢人口がほぼ全産業で減少していく見通しです。地質調査・地盤コンサルタントの業界も例外ではなく、限られた人員でいかに付加価値を生み出すかが経営課題です。AIで効率化された時間を新しい提案や顧客対応に振り向けるというゴール設計を共有することから、第1回はスタートしました。


第1回テーマは「シャドーIT」だった理由

全12回の初回テーマに選ばれたのは、華やかなAI活用術ではなく「シャドーITとガイドライン整備」でした。

シャドーITとは、会社が公式に承認していないITツールやAIを社員が独自に使用している状態を指します。「ChatGPTを個人のスマホで使って業務メールを書く」「無料版AIに顧客資料を貼り付ける」といった行動は、業務効率化の観点では有益でも情報漏洩リスクや責任所在の曖昧化を引き起こします。

専門業種ほどリスクは高くなります。顧客から預かった地質データや調査結果が無料AIの学習データに取り込まれると、取り戻せないためです。研修では「会社として認めるツールと禁止するツールを明記する」「機密情報の入力を禁止する」「AI出力は必ず人間が確認する」という3点を、最低限のガイドラインとして整備すべきだと提言されました。


専門業種でAIは仕事になるのか

参加者から寄せられた質問のひとつが、「地質評価で迷ったとき、AIに相談しても大丈夫か」というものでした。

回答は明快です。参考程度の活用は有効ですが、専門家の判断の代替にはならないため、AIの回答を叩き台として最終判断は専門知識を持つ担当者が行う運用が望ましい――この原則は地質業界に限らず、税務・医療・法務など専門性の高い業務すべてに当てはまります。AIを「相談相手」として位置づけ、専門家による最終チェックをセットにする運用が、専門業種における現実的な活用法です。


ハルシネーションは現実に起きる――Geminiの実例

研修で印象的だったのが、ハルシネーション(AIが事実と異なる回答を生成する現象)の実例です。

ある顧客が決算見込みデータをGeminiに読み込ませたところ、「1月の営業利益にだるいと記載されている」と誤回答するケースが発生しました。同じデータをChatGPT、Claude、NotebookLMに読み込ませても正常に回答が返っており、Geminiのみに発生した現象でした。

この事例が示すのは、ツールによって精度に差があること、そしてどんなに高精度なAIでも人間による最終チェックが不可欠だということです。研修では「自分でチェックできる情報を生成させる」「別のAIで信憑性を確認する」など、具体的な対策が共有されました。


アンケート結果と次回への展望

研修終了後のアンケートは9名全員から回収され、AI活用への役立ち度が5点満点中4.6、総合満足度が4.3という高評価となりました。

AI活用の障壁として最多だったのは「情報漏洩・セキュリティへの懸念」で9名中7名(78%)、次いで「ハルシネーション対応の手間」が5名(56%)。第1回でシャドーITとガイドライン整備を扱ったことが、参加者の課題意識と合致していたことが裏付けられた形です。

今後希望するテーマでは、「具体的な企業・業務でのAI活用事例」が5名(56%)と最多でした。次回(第2回)は2026年5月27日(水)に開催予定で、参加者それぞれが「業務またはプライベートでAIを使ってみる」体験を持ち寄る形で進めます。

地方中小企業、特に専門業種で組織的にAI活用を推進している例はまだ多くありません。今取り組むことが業務効率化だけでなく採用ブランディングや競争優位にもつながります。次回以降のレポートも順次お届けしていきます。


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