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2026/10/26

自治体の生成AI事例とは?Google公開の9件と会社での使い方

筆者/喜多 辰徳

「生成AIを仕事に入れたいけれど、何から手を付ければいいのか決めきれない」。地方で会社やお店を営む方から、いちばんよく聞く悩みです。

2026年9月29日、Googleが全国の自治体と進めてきた生成AIの事例をまとめたWebサイトを公開しました。観光案内や企業のDX相談、営業の練習相手など、多くは人手が足りない現場の仕事から始まっています。

この記事では、9件の事例を一覧にし、地域の会社やお店の仕事に置き換えられる4つの型に分けて紹介します。

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Googleと東大 松尾・岩澤研究室が自治体と進めてきた取り組み

Googleは2024年6月から、東京大学 松尾・岩澤研究室とともに、全国の自治体を対象に生成AIの試作(プロトタイプ)づくりと実証実験を続けてきました。2026年9月時点で40を超える自治体と対話を重ね、雇用・健康・福祉・行政効率化などの分野を支援しているとしています。

今回のサイトには、進行中のものを含む事例と、自治体職員を主な対象にした無償のデジタルスキル講座の受け方が載っています。このニュースは、Impress Watchが9月30日に報じました。

「9自治体」は、正確には8つの自治体の9件

報道もGoogleのブログも「9自治体の事例」と書いていますが、事例サイトのCASE 01〜09には京都府が2件入っています。自治体の数は8つ、事例の数が9件です。


9件の事例を一覧で見る

カッコ内の段階は、Googleのブログの書き方に合わせています。「実装」と書かれているのは京都府の学び直しAIだけで、ほかの8件はブログでは試作か実証研究として紹介されています。

・神奈川県:SDGsパートナー制度で、企業どうしの組み合わせをAIが提案(試作を導入)

・京都府:生涯学習サイト「KYO育tv.」に、Geminiを使ったAIコンシェルジュ(実装)

・広島県:いくつかの質問に答えると、食生活の診断と助言を返すツール(試作を開発中)

・北海道南富良野町:公式の観光情報に加え、Xや観光事業者の発信も参照して答える観光チャット(試作を開発中)

・島根県美郷町:公式サイトの情報をもとに、回答と根拠ページを示す対話AI(試作を構築)

・大分県:県のサイトを回答の材料にするチャットボット(松尾研究室と実証研究)

・山口県:年間180件に上る企業のDX相談で、似た支援例や補助金を探し、提案づくりを助けるAI(試作を開発)

・福井県:ものづくり企業の技術営業向けに、AIが顧客役を務める「顧客シミュレーター」(試作を構築)

・京都府:日数や移動手段、好みを聞いて「定番の王道プラン」と「混雑を避ける穴場プラン」の2案を出す旅程AI(試作を構築)

9件の事例のうち、北陸から入っているのは福井県の1件です。分野は観光・産業・健康・教育にも広がり、役所の内側の事務だけの話ではありません。


型1 手元の資料を読ませて、根拠つきで答えさせる

美郷町と大分県は、すでにある公式サイトの情報をAIの回答の材料にしています。大分県の実証では、大量のFAQ(よくある質問集)を用意しなくても実用的な回答の精度を確保できたとしています。美郷町が作ったAIは、答えと一緒に根拠のページも示します。

地域の会社やお店に置き換えると、次のような使い方になります。

・就業規則や作業手順書を読ませ、新人の質問に答えさせる

・自社サイトの商品説明を読ませ、問い合わせへの返信の下書きを作らせる

・答えには元の資料の該当箇所を添えさせ、人が確かめてから使う

根拠を示させておけば、AIが資料にないことを答えたときに人が気づけます。資料を読ませて出典つきで答えさせる道具には、GoogleのGemini Notebook(2026年7月にNotebookLMから名称変更)などがあります。


型2 外の「今」の発信まで読ませて答えさせる

南富良野町が開発中の観光チャットは、公式の観光情報だけでなく、Xや観光事業者の発信もAIが参照します。天候や営業状況のように変わりやすい情報は、公式サイトだけでは届けきれないためです。

お店や会社の側から見ると、この事例は「AIに読まれる側」の話でもあります。観光客の質問にAIが答えるとき、材料になるのは事業者が出している発信で、発信していない情報はAIも参照しようがありません。その日の営業時間や臨時休業、季節のメニューをSNSや自社サイトでこまめに出しておくことは、AIが答えを作る場面での店先の手入れにあたります。


型3 ベテランの知恵を、若手の練習相手と相談の下ごしらえに使う

福井県の事例は、繊維や眼鏡などのものづくりで、技術の価値を顧客の課題に合わせて語る商談のコツがベテランの頭の中にしかない、という課題から始まっています。そこで、AIが顧客役を務める「顧客シミュレーター」を作り、若手が実践の中で学べるようにしました。

山口県のDX推進拠点「Y-BASE」は、年間180件に上る企業のDX相談をすべて人手で受けていました。そこで、過去の支援の知見をもとに似た事例や補助金を探し、提案づくりを支えるAIを試作しています。

汎用のAIチャットに顧客役を頼むなら、次のような指示から始められます。

あなたは、当社の製品を初めて検討している取引先の購買担当者です。
・業種:(例:地方の食品メーカー)
・いま困っていること:(例:包装の手作業が多く、人手が足りない)
・気にしていること:(例:初期費用、導入後の手間、同業での前例があるか)
私が営業担当として話します。本物の担当者のように、すぐには納得せず、質問や反論をしてください。
10往復したら役を降りて、私の説明のよかった点と足りなかった点を3つずつ挙げてください。

ベテラン社員に、実際によく受ける質問や反論を書き出してもらい、「気にしていること」に足すと、練習が現場に近づきます。


型4 選択肢を2つ並べて、選ぶのは人に任せる

京都府の旅程AIは、旅行者の希望を聞き取り、「定番の王道プラン」と「混雑を避ける穴場プラン」を同時に出します。京都市内の一部エリアへの観光客の集中を和らげ、府内各地に人の流れを作るのが狙いです。神奈川県のマッチングAIも、人では気づきにくい異業種どうしの組み合わせまで候補に入れます。

答えを1つに絞らず、「定番」と「意外な選択肢」を並べる出し方は、お店の接客や会社の提案書にもそのまま使えます。

お客さんの条件:(例:3人、予算は1人3,000円、辛いものが苦手)
当店のメニュー一覧:(ここに貼る)
この条件で、次の2案を出してください。
・定番案:初めての人に勧める組み合わせ
・穴場案:定番ではないが、条件に合う意外な組み合わせ
それぞれに、勧める理由を1行ずつ付けてください。メニュー一覧にないものは出さないでください。

提案書なら「手堅い案」と「攻めた案」に置き換えて使えます。


Googleが挙げた3つの学び

Googleはブログで、自治体との対話から見えてきた学びを3つ挙げています。

・技術から考えず、「地域がどうありたいか、何を解決したいか」から逆算する

・道具を配って終わりにせず、現場固有のデータと安全に結びつける

・現場をよく知る人、つまり自治体職員自身がAIのスキルを身につける

データの扱いについて、GoogleはGemini Enterpriseの環境では入力データをAIモデルの学習に使わないとしています。これは法人向け環境の説明なので、個人向けの無料の使い方で社外秘の資料を入れる前には、使っているサービスの設定を確認してください。

この3つは、会社やお店にもそのまま当てはまります。


無償で受けられるGoogleの講座

事例サイトには、Googleのデジタルスキル講座の一覧も載っています。公共部門の職員向けの「AI Connect アカデミー」のほか、会社の経営者や担当者に向く講座も並んでいます。

・はじめての生成 AI 活用:生成AIの基礎から、日々の業務での使い方までを学ぶ無償プログラム

・いますぐはじめる観光のデジタル化:無料のデジタルツールで観光客と事業をつなぐ方法を学ぶ講座

・いますぐはじめる Google ビジネス プロフィールの登録 / 活用方法:検索や地図に出る店舗情報の講座


出典

・Impress Watch「グーグル、観光や行政支援など 全国9自治体の生成AI事例を公開」(佐々木翼、2026年9月30日)
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2144203.html

・Google Japan Blog「AI の力で、全国の自治体とともに拓く日本の未来:ローカル AI プロジェクトの新たな一歩」(2026年9月29日)
https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/outreach-initiatives/ailocalproject/

・Grow with Google「全国の自治体で、地域課題解決に向けた生成 AI モデルの実装と人材育成を支援」
https://grow.google/intl/ja_jp/local-government/


よくある質問

Q.紹介されているAIは、もう使えるのですか?

A.Googleのブログで「実装」と書かれているのは、京都府のKYO育tv.のAIコンシェルジュです。ほかの8件はブログでは試作や実証研究として紹介されており(事例サイトでは書き方が異なるものもあります)、一般に公開されているかどうかは事例ごとに確かめる必要があります。

Q.会社やお店でも同じことができますか?

A.事例は自治体の課題に合わせて作られたもので、そのまま使えるわけではありません。ただ、手元の資料を読ませて根拠つきで答えさせる、顧客役を頼んで練習する、2案を並べさせる、といった使い方は、汎用のAIチャットでも試せます。

Q.地元の役場にこの取り組みを伝えたいときは、どうすればよいですか?

A.Googleの事例サイトに、自治体向けの問い合わせ窓口があります。地域課題やAI活用についての相談を受け付けています。


まとめ

・Googleが公開した自治体の生成AI事例は8つの自治体の9件で、多くは試作や実証の段階です

・使い方は「資料を読ませて根拠つきで答える」「外の今の発信を読ませる」「ベテランの知恵を練習相手にする」「2案を並べる」の4つの型に分けられます

・どの事例も、AIでできることからではなく、地域の具体的な課題から始まっています

まずは、社内で同じ質問が何度も来る仕事を1つ選び、手元の資料をAIに読ませるところから試してみてください。

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