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2026/09/10

Gemini Notebookに上司役をさせて差し戻しを減らす

筆者/喜多 辰徳

商談そのものは苦にならないのに、その前と後で消耗している。営業の仕事には、そういう構造があります。

前夜は資料をかき集めて頭に入れ直し、商談の後は提案書を作り、上司に出しては差し戻される。しかも差し戻しの理由は、よく思い返すと毎回似ています。この記事では、差し戻しの往復を減らす具体的な手順と、商談準備をGemini Notebookに寄せる方法をお伝えします。

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営業の時間泥棒は、商談の前後にあります

お客様と向き合う時間は、成果に直結します。ところが実際に時間を食っているのは、その前後の事務工程です。

商談前の情報の集め直し。提案書の作成。社内承認の往復。顧客の声の集計。どれも成果には直結しないのに、確実に時間を持っていきます。

このうち、最も見えにくく、最も重いのが社内承認の往復です。


差し戻しの原因は、内容の質ではありません

提案書を出す。差し戻される。直す。また差し戻される。この往復では、修正時間だけでなく、待ち時間と気力も失われます。

そして差し戻しの理由は、たいてい内容の質ではありません。決裁者の判断基準を外していることです。

数字を重視する上司に熱意で書けば通りません。リスクの明示を求める上司に利点だけを並べても通りません。内容が良くても、判断の入口が合っていなければ止まります。

ここで多くの人は「上司の気分の問題だ」と解釈して、対策を諦めます。しかし実際には、基準は存在しています。明文化されていないだけです。

そして明文化されていないものは、過去の履歴から取り出せます。


まず、判断基準を取り出します

過去の承認済み提案書、差し戻されたときの指摘メール、面談の記録。これらをノートブックにソースとして入れてください。

そのうえで、基準そのものを言語化させます。

ソースの資料(承認された提案書、差し戻し時の指摘、面談の記録)を
分析して、決裁者の判断基準を整理してください。

1. 何を重視して判断しているか
2. 却下されやすいパターン
3. 一度で承認された提案に共通している点
4. 好まれている構成や順番

推測ではなく、資料のどこに根拠があるかを示しながら分析してください。

最後の一行が重要です。これを入れないと、一般論の上司像が返ってきます。あなたの上司の基準ではなく、世間一般の上司の基準です。

出てきた基準を読むと、たいてい思い当たります。「毎回同じ理由で止められていた」と気づく瞬間が、この作業の目的です。

そのうえで、通してもらう前に見てもらう

基準が言語化できたら、次の提案を出す前に通します。

先ほど整理した判断基準に照らして、以下の提案を点検してください。

1. 基準を外している箇所と、その理由
2. 却下されやすいパターンに当てはまる記述
3. 基準に沿うよう組み立て直した構成案

(提案の内容を貼り付け)

これは上司に合わせて内容を曲げる作業ではありません。同じ内容を、相手が判断できる順番で並べ直す作業です。

差し戻しが1回減るだけで、修正と再提出と待ち時間がまとめて消えます。

なお、最も確実な情報源は上司本人です。「どういう提案だと通しやすいですか」と一度聞いて、その答えをメモに残す。この10分が、以降のすべての提案に効き続けます。


ロープレは「創作」ではなく「資料に基づく再現」です

大事な商談の前に練習したい。でも先輩に頼むのは気が引けるし、日程も合わない。そこでAIを練習相手にする方法があります。

ただし、ここには知っておくべき制約があります。

Gemini Notebookのチャットは、アップロードしたソースのデータのみを使って回答します。明示的に創作的な処理を求めると、回答できない旨が返ることがあります。

つまり、資料を入れずに「厳しい顧客役をやってください」とだけ頼んでも、期待した動きになりません。役を演じさせる前に、演じるための材料を渡す必要があります。

先に、商品資料、価格表、過去の想定問答、実際に受けた質問の記録をソースに入れてください。そのうえで役を振ります。

あなたは、ソースにある商品の導入を検討している顧客の担当者です。
慎重な性格で、社内稟議を通す必要があります。

価格、競合との比較、導入の手間について、ソースの内容をもとに
厳しめに質問してください。
私が回答したら、その回答の良い点と改善点を講評してください。

「厳しめに」の指定を省かないでください。優しい顧客との練習には意味がありません。値引きを迫る、競合を引き合いに出す、導入の手間を渋る。嫌な質問ほど、事前に浴びておく価値があります。

時間が取れない日は、練習ではなく一覧だけ作らせる方法もあります。「ソースをもとに、想定される質問を厳しい順に10個、回答例を添えて」と頼んで、それを持って商談に入るだけでも違います。


商談準備は、顧客ごとのノートブックに寄せる

前回の議事録はどこか、先方の宿題は何だったか。商談前夜に情報をかき集める時間は、顧客の数だけ、商談の数だけ発生します。

解決は単純で、顧客ごとにノートブックを1つ作ることです。打ち合わせのメモ、過去のやり取り、提案書、先方の公開情報を、その顧客のノートブックに集約し続けます。

商談前は、これを打つだけです。

明日の商談に向けて、ソースから以下を整理してください。

1. これまでのやり取りの経緯と、前回の宿題
2. 先方の現状と、想定される関心事
3. 今回提案すべき内容と、その根拠
4. 想定される質問と回答案を3つ

かき集める時間が、確認する時間に変わります。

そして効果は時間の先にあります。全履歴を踏まえた商談は、「前回の宿題、こうしました」から始められます。覚えていてくれたと感じさせる営業は、それだけで差がつきます。

担当を引き継ぐときも、このノートブックごと渡せば済みます。


お客様の声は、読み切れないから放置されている

アンケートの自由回答、レビュー、問い合わせの履歴。改善のヒントが詰まっているのに、数百件を読む重さから「あとで読む」のまま放置されがちです。

回答データをソースに入れて、分析を任せてください。個人が特定される情報は、必ず削除するか伏せてからにしてください。

ソースのお客様の声を分析して、以下をまとめてください。

1. 頻出する不満を5つ(件数の傾向を添えて)
2. 頻出する評価点を5つ
3. 声の裏にありそうな、言われていない本音の仮説
4. 商品やサービスの改善提案を3つ

3番が、この分析の面白いところです。個々の声を読むだけでは見えず、数百件を横断したときにだけ浮かぶ傾向が出てきます。

読み切れないから放置していた仕事が、定期的に回せる仕事に変わります。


会話スタイルを、用途で切り替える

チャットパネルの設定から、会話のスタイルを変更できます。ビジネス寄りの戦略や意思決定に向いたスタイル、ナレッジベースとして共有する場合に向いたスタイル、そして自分で指定するカスタムが用意されています。応答の長さも選べます。

営業の業務に当てはめると、こうなります。

・判断基準の分析やお客様の声の分析には、戦略と意思決定に向いたスタイル

・ロープレには、カスタムで役を指定する

・顧客や社内に共有するノートブックには、案内役に向いたスタイル

2点、注意があります。

1つ目は、この設定がPro機能として提供されている点です。無料の範囲ではソースの追加と通常のチャットまでになります。

2つ目は、チャット設定がモバイルアプリでは現在サポートされていない点です。ウェブ版で設定してください。移動中にスマートフォンで準備しようとすると、ここでつまずきます。


始め方

いきなり全部を作らず、次の順番で試してください。

・過去に承認された提案書と、差し戻されたときの指摘メールを集める

・それだけを入れたノートブックを作る

・判断基準を取り出すプロンプトを実行する

・出てきた基準を読み、思い当たるかどうかを確認する

4つ目で思い当たるものが出てくれば、この方法は機能します。出てこなければ、資料が足りていません。差し戻しのメールをもう少し集めてください。

なお、顧客の資料や社内の提案書をAIに入れる前には、社内ルールの確認を済ませておいてください。取引先名や金額が含まれる場合はなおさらです。


よくある質問

Q. 上司の基準に合わせるのは、忖度ではありませんか。

A. 内容を曲げるのであれば、そのとおりです。ここで行うのは、同じ内容を相手が判断できる順番に並べ替えることです。伝える順番を変えるだけで通るものを、順番のせいで止められているのはお互いに損失です。

Q. ロープレで、資料にないことを聞いてもらえますか。

A. 難しいです。チャットの回答はソースのデータをもとにするため、資料に根拠のない即興は期待できません。想定される質問の記録や競合の情報を、あらかじめソースに入れておいてください。

Q. スマートフォンからでも設定できますか。

A. チャット設定はモバイルアプリでは現在サポートされていません。ウェブ版で設定してください。設定後の利用については、環境によって異なります。

Q. 会話スタイルの変更は無料でできますか。

A. チャット設定はPro機能として提供されています。無料の範囲では、ソースを追加して通常のチャットで質問するところまでになります。判断基準の分析自体は、通常のチャットでも実行できます。

Q. 顧客ごとにノートブックを作ると、数が増えすぎませんか。

A. 継続的に取引のある顧客から始めてください。単発の案件まで作る必要はありません。次の商談が予定されている相手だけで十分です。


まとめ

営業の前後の時間を取り戻すために、押さえるべきことは3つです。

・差し戻しの原因は内容の質ではなく、決裁者の判断基準を外していることです。基準は過去の履歴から取り出せます

・ロープレは創作ではなく資料に基づく再現です。役を振る前に、商品資料と想定問答をソースに入れてください

・チャット設定はPro機能で、モバイルアプリでは現在サポートされていません

まずは、承認された提案書と差し戻しの指摘メールを集めるところから始めてください。毎回同じ理由で止められていたと気づけば、次の提案から変わります。

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