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長いプロンプトは要らない。面倒な業務を一文からツールにする|中部地質株式会社・全12回AI研修の第5回レポート

筆者/喜多 辰徳

AIに質問して答えをもらうところで止まり、日々の仕事は変わっていない。そう感じている方は少なくありません。第4回までにガイドラインづくり、議事録の自動化、ChatGPTとClaudeの使い分けを学んできた中部地質株式会社のAI研修は、第5回で「AIで自分の業務ツールをつくる」段階へ進みました。

地質調査・地盤コンサルタントとして石川県で実績を持つ同社の選抜メンバーが、面倒な作業を一つ選んでツールの形にする実践に取り組んだ第5回(2026年8月24日開催)の様子をレポートします。


開催概要

・日時:2026年8月24日(月)16:00〜

・主催:中部地質株式会社

・講師:柏野 真吾(株式会社AI-Brain 代表取締役・前半進行)/木元 拓(同 公認パートナー・後半ハンズオン進行)

・テーマ:Claudeで「面倒な業務」をツールに変える

・参加者:中部地質株式会社 生成AI活用選抜メンバー

・回数:全12回プログラムの第5回

第5回のゴールは「選ぶ・作る・試す」の三つです。業務から面倒な作業を一つ選び、Claudeと対話しながらツールにし、実務で試す準備まで進めます。完成度100%は目指さず、まず「使える形」にすることが強調されました。


AIは「一択」で選ぶ時代ではなくなりつつある

前半は柏野が最新動向を共有しました。2026年5月、Anthropicは評価額9,650億ドル(約154兆円)でOpenAIを初めて上回ったと報じられています(Bloomberg、2026年5月28日)。一方で講義では「Anthropic一択でよいのか」という問いも示されました。7月には中国のMoonshot AIが、AIの学習結果である「重み」を公開するオープンウェイト型モデル「Kimi K3」を発表し、米国の最新モデルに迫る性能を示しています。

提供元のサービスに接続して使うクローズド型は、専門人材がいなくても使える反面、データは社外に送られ、費用は利用量に比例して増えます。自社サーバーで動かすオープン型は、データを外に出さずに済む一方、数百万円規模の投資と専門人材が欠かせません(講義資料より。出典:日本経済新聞2026年8月15日付ほか)。中小企業の現実解は、当面はクローズド型を使いこなしつつ、入力してよい情報と費用の増え方を意識し、一つのツールに頼り切らないことです。

あわせて、Anthropicの業務向けAI「Claude Cowork」をきっかけに国内外のSaaS(インターネット経由で使う業務ソフト)銘柄が軒並み下落した「Coworkショック」も紹介されました。既製のソフトを使うだけでなく、自社の業務に合う道具をAIで作れる時代に入りつつあり、この流れが後半のテーマにつながります。

「質問する」から一歩進み、Claudeに仕事を教える

これまでの研修は、Claudeに質問し、回答をその場で使うことが中心でした。第5回は参加者一人ひとりが自分の業務を題材に、Claudeに仕事を教え、使えるツールに仕上げる、実務に落とし込む回です。

ツールを作る前に、決めておくルールは三つで十分

ツールを作る前に確認されたのが、社内で最初に決める三つのルールです。何を入力してよいかを決める入力ルール、誰が最終確認するかを決める確認ルール、どこまで公開してよいかを決める共有ルールで、細かい規程より先に運用の土台を決めることが大切だとされました。

Claudeの設定画面では、会話データの学習への利用、記憶(メモリ)、共有した会話の管理の三点を確認します。「安全です」と言い切ることより、どこで確認・変更できるかを知っておくことが重要です。

面倒な業務は「入力・処理・出力」に分けるとツールになる

手書きのメモを電話や口頭で伝え、社内で再入力するうちに抜け漏れが起きる。こうした業務は、その場で入力した内容をAIが整理し、すぐ共有できる形に変えられます。考え方は、メモ・写真・音声などの「入力」、整理・分類・文章化といった「処理」、報告書・一覧表・定型文などの「出力」の三つに分けるだけです。現場の情報を持ち帰って報告書にまとめる地質調査の仕事には、そのまま当てはめやすい考え方といえます。

毎回ゼロから説明しないために、前提を渡しておく

「私は〇〇の担当です」「回答は結論からお願いします」「表や箇条書きを優先してください」といった前提を最初に設定しておけば、毎回説明し直す必要がなくなります。うまく聞くより、前提を渡すことが大切です。内容を覚えておくメモリ機能も、何が記憶されているかを見て、今後も必要かを判断し、不要なものは消すという管理を前提に使うよう示されました。

長いプロンプトは要らない。目的を一文で伝え、対話で育てる

題材の候補には日報、会議メモ、定型文、報告書の下書き、情報の分類、チェック業務が挙がり、迷ったら何度もやっている作業から選ぶよう助言がありました。

最初の指示は「〇〇するためのツールを作りたい。必要な機能を一緒に考えてください。」の一文で十分です。例として「現場で聞いた内容を入力すると、社内報告用に整理してくれるツールを作りたい。」が紹介されました。あとは「入力項目を減らして」「結果を表にして」と気になった点を伝え、作る・試す・直すを繰り返します。

完成の判断基準は、見た目ではなく使えるかどうかです。

・入力しやすいか

・ほしい結果が出るか

・操作に迷わないか

・余計な機能が多すぎないか

・実務で一回試せそうか

「作った」で終わらせず、社内で使うところまで進める

完成したら共有設定を確認してURLを発行し、社内チャットやメールで案内して実務で使います。共有前には公開範囲と入力内容を必ず確認することが念押しされました。今日からの取り組みとして示されたのは、作ったものを業務で使い、使えたこと・使えなかったことをメモし、足りない点をClaudeと一緒に直すことです。AIは一度作って終わりではなく、使いながら育てるものだというメッセージで、第5回は締めくくられました。


アンケート結果と次回への展望

研修後のアンケートでは、今回の内容が役立ったかという問いに大半が最高評価をつけました。総合満足度も全員が上位の評価でしたが、最高評価の割合は前回を下回り、自由記述には当日のClaudeの調子が悪く消化不良感が残ったという声もありました。AIツールは日によって不安定になることもあり、一つのツールに頼り切らない備えの必要性を改めて示す形になりました。

障壁として最も多く挙がったのは「AIツール導入・利用にかかるコスト」で、前回最多の「業務に組み込むための具体的な方法が分からない」を上回りました。重要なテーマでは大半が「具体的な企業や業務でのAI活用事例」を選んでいます。ツールを作って使う段階に入り、費用面と、自社に置き換えられる実例への関心が高まっていることがうかがえます。

全12回のプログラムは、次回で折り返しを迎えます。次回以降のレポートも順次お届けしていきます。


AI活用を社内でどう進めるべきか迷っていませんか? AI-Brainでは中小企業向けに30分の無料相談を実施しています。自社の業務に合わせたツールづくりや、社内ルールの整え方もご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。

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