「この仕事、10年後もあるのだろうか」。閉店後の片付けをしながら、あるいは月末の数字を眺めながら、ふと頭をよぎったことはありませんか。ところが不安は浮かんでも、翌朝にはいつもの仕事が始まり、考える時間は後回しになります。
この記事では、その漠然とした不安を、AIへの2つの質問で「今週やること」に変える方法を紹介します。使うのはコピーして貼るだけの短いプロンプトです。読み終えるころには、自分の業態が消えるきっかけの仮説と、今週から始められる5つの仕込みが手元に残ります。
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「AIに奪われる仕事」の一覧を見ても手が動かない理由
「AIでなくなる仕事」といった一覧記事を読んだ経験がある方は多いはずです。ただ、読んだあとに行動を変えた方は少ないのではないでしょうか。
理由は単純です。一覧に載っているのは「職業」であって、「あなたの店」や「あなたの会社」ではないからです。同じ業種でも、立地、客層、仕入れ先、後継者の有無で、消え方も残り方もまったく違います。

必要なのは世の中全体の予測ではありません。自分の業態に絞った「消え方の仮説」です。そして、その仮説づくりはAIが得意とする作業です。
使うのは2つの質問だけです
プロンプトは次のとおりです。ChatGPT、Claude、Geminiのどれでも使えます。
私の仕事(業態)は次のとおりです。
・業種:
・地域と客層:
・主な売上の柱:
・働いている人数と年齢層:
質問1:この仕事(私の業態)が10年後に消えているとしたら、何がきっかけだと思いますか。可能性の高い順に3つ、理由とともに挙げてください。
質問2:その前提で、今週から仕込めることを5つください。お金をほとんどかけず、1人でも始められることに絞ってください。使い方は3ステップです
上のプロンプトをコピーして、業種や客層の欄を自分の言葉で埋めます。
AIに貼り付けて送信します。
返ってきた「きっかけ」のうち、いちばん胸がざわついたものに印をつけます。
欄を埋めるときのコツは、きれいに書こうとしないことです。「常連は60代が中心」「売上の大半は法人の定期注文」のように、ふだん頭の中にある言葉のままで十分です。
ただし、取引先の実名や個人情報、未公開の数字は入力しないでください。業種と状況が伝われば、AIは十分に考えられます。
なぜ「消えている前提」で聞くと答えが変わるのか
「この仕事の将来性はどうですか」と聞くと、AIは良い面と悪い面を並べた、当たり障りのない答えを返しがちです。結論が決まっていない問いには、両論を並べるしかないからです。
一方、「10年後に消えている」と結論を先に固定すると、AIは理由探しに集中できます。これは人間でも同じです。結果が「すでに起きた」と確定した形で想像すると、理由を具体的に挙げやすくなるという心理学の研究報告もあります。
経営の世界には「プレモーテム(事前検死)」という手法があります。心理学者のゲイリー・クライン氏が2007年にハーバード・ビジネス・レビューで紹介した方法です。計画を始める前に「このプロジェクトは失敗した」と仮定し、その理由をチームで書き出します。失敗を前提に置くと、ふだんは言い出しにくい懸念が表に出てきます。

今回のプロンプトは、このプレモーテムを自分の業態そのものに当てはめたものです。
前提を置く意味は、過去の例を見るとよくわかります。カラー写真フィルムの世界需要は2000年をピークに急減し、10年ほどで10分の1以下になりました。きっかけはデジタルカメラの普及でした。フィルムの品質が落ちたわけではなく、お客さんの「写真を撮る」という用事の片付け方が変わったのです。
業態が消えるとき、原因は自分たちの努力不足とは限りません。だからこそ、外から来る変化を先に言葉にしておく価値があります。
AIの答えは4つの箱で読みます
返ってきた「きっかけ」は、次の4つの箱に分けて読むと整理しやすくなります。
・技術の箱:AIや新しいサービスが、自分の仕事の一部を代わりにこなすようになります。
・お客さんの箱:客層の高齢化や人口減少で、買う人そのものが減っていきます。
・担い手の箱:後継者や働き手が見つからず、続けたくても続けられなくなります。
・ルールの箱:制度や取引条件、プラットフォームの仕様が変わり、今の稼ぎ方が成り立たなくなります。

AIの話題になると技術の箱ばかりに目が向きます。しかし地方で事業をしていると、お客さんの箱と担い手の箱のほうが先に効いてくる場面が少なくありません。AIの答えが技術の話に偏っていたら、「人口や後継者の面ではどうですか」と追加で聞いてみてください。
回答例:地域の情報メディアで聞いてみると
イメージをつかむために、地域の情報メディアを運営する立場で入力した場合の例を紹介します。回答はAIの種類やタイミングで変わるので、あくまで一例としてご覧ください。
きっかけとして挙がりやすいのは次の3つです。
・お店探しの入口が検索からAIとの会話に移り、メディアを経由せずに答えが完結するようになります。
・広告を出してくれる地域の事業者そのものが、廃業や後継者不在で減っていきます。
・取材して書くという作業の価値が下がり、誰でも似た記事を量産できるようになります。
これに対して、今週から仕込めることとして返ってくるのは、たとえば次のような内容です。
・AIに自社の名前を聞いて、どう紹介されるかを確認します。
・足で稼いだ一次情報(取材メモ、写真、店主の言葉)を整理して保管します。
・広告以外の収入の種を1つ書き出し、知り合いの事業者1人に感想を聞きます。
・読者と直接つながる手段(メール、LINEなど)の登録者数を確認します。
・取材先の店主に「10年後も続けるために困っていること」を1つ聞きます。

どれも大がかりな準備はいりません。大きな戦略ではなく、今週の予定表に書ける大きさになっている点が、このプロンプトの良さです。
5つの仕込みを予定表に入れる追い質問
5つの提案をもらって満足してしまうと、何も変わりません。続けて次の質問を送ってください。
5つのうち、今週中に30分以内で着手できるものを1つ選び、最初の一歩を具体的な作業手順にしてください。AIは「何曜日に、何を開いて、何を書くか」の水準まで分解してくれます。その1つを予定表に書き込むところまでが、このプロンプトの使い方です。
残りの4つを捨てる必要はありません。メモに残しておき、来月同じプロンプトをもう一度試したときに見比べると、状況と自分の関心の変化が見えてきます。
気をつけたい3つのこと
1つ目は、AIの答えを予言として受け取らないことです。AIは未来を知っているわけではありません。返ってくるのは、もっともらしい仮説の一覧です。当たるかどうかよりも、自分が見落としていた角度があるかどうかを見てください。
2つ目は、不安をあおる材料にしないことです。この問いの目的は、怖がることではなく、備えを始めることです。読んで気が重くなったら、質問2の答えだけを見返してください。
3つ目は、1人で抱え込まないことです。AIの答えを家族や従業員、同業の仲間と一緒に眺めると、「それはうちには当てはまらない」「それは実はもう起きている」といった現場の声が出てきます。その会話こそが、最大の収穫になります。

よくある質問
Q1. 無料版のAIでも使えますか
使えます。無料版でも、考える材料として十分な答えが返ってきます。より深い答えがほしいときは、有料版や推論に強いモデルを試してください。
Q2. 会社員でも使えますか
使えます。「業態」を「職種」や「部署の役割」に置き換えてください。たとえば「地方の建設会社の経理担当」のように書くと、自分の立場に合った答えが返ってきます。
Q3. 答えが一般論ばかりになります
入力欄の情報が少ないことが原因です。地域、客層、売上の柱を書き足してください。「もっと私の状況に即して、具体的に言い直してください」と返すのも有効です。
Q4. なぜ10年なのですか
1年後では今の延長でしか考えられず、30年後では遠すぎて自分ごとになりません。10年は、変化が十分に起こり、かつ自分がまだ現役でいる可能性が高い長さです。変化の速い業種では5年に縮めてもかまいません。
まとめ
・「10年後に消えている」と前提を固定して聞くと、AIは業態に即した具体的なきっかけを挙げてくれます。
・答えは技術、お客さん、担い手、ルールの4つの箱で読むと、見落としに気づけます。
・5つの仕込みのうち1つを、今週の予定表に書き込むところまでがセットです。
まずは上のプロンプトをコピーして、業種の欄を埋めるところから始めてください。
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